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酔いどれの鉄腕

2001年、近鉄の逆転での優勝決定を予言したときの話。解説にはもっとロマンがほしい/佐藤道郎『酔いどれの鉄腕』

 

 元南海-大洋の佐藤道郎氏の書籍『酔いどれの鉄腕』が2月4日にベースボール・マガジン社から発売された。

 南海時代は大阪球場を沸かせたクローザーにして、引退後は多くの選手を育て上げた名投手コーチが、恩師・野村克也監督、稲尾和久監督との秘話、現役時代に仲が良かった江本孟紀門田博光、コーチ時代の落合博満村田兆治ら、仲間たちと過ごした山あり谷ありのプロ野球人生を語り尽くす一冊だ。

 これは不定期で、その内容の一部を掲載していく連載である。

打たれた入江を褒めてあげたい


『酔いどれの鉄腕』表紙


 今回も「第6章近鉄コーチ時代」より。本が発売になったので、この連載はひとまず最終回としましたが、もう少し読みたいというご意見もありましたので、2、3回だけ追加でやります。

 あとは、できれば、書籍を購入のうえ、ごゆっくりお楽しみください。

 近鉄は1996年限りで退団し、そこからまた評論家になった。

 時々、大阪にも呼んでもらって、近鉄戦の中継も担当したけど、そこそこいいギャラでありがたかったよ。

 たまたま、2001年の優勝のときも解説だったんだ。最後、北川博敏が代打逆転サヨナラ満塁本塁打を打って決めた試合ね(9月26日、大阪ドームでのオリックス戦)。

 一時、話題になったんだけど、あのとき俺は、「北川がホームランを打つんじゃないですか。ガツンといかなきゃ話にならないですよ」と中継で話していたんだ。北川は日大の後輩だし、期待も込めてだけどね。

 解説者は外れてもいいんだよ。「ここはエンドランもありますね」と言えば、見ている人が「そういう作戦もあるか」と思って、より楽しく見てもらえるでしょ。

 結果論ばかりで、終わってから「ここはエンドランにすべきでした」はちょっと盛り下がるし、はっきり言えば、解説者の自己満足でしょ。でもまあ、ほんとに打ったからすごかった。後ろの音声さんが俺に拍手してくれ、こっちまでうれしくなったよ。

 これはテレビじゃなく、店でお客さんに話していたときだけど、シーズンの最終戦、最後の打席で、ヤクルト村上宗隆王貞治さんの記録を超える56号本塁打を打ったでしょ。

 解説者は中継だけじゃなく、どのテレビ番組やスポーツ紙を見ても、村上を大絶賛だった。俺もすごいと思うよ。 でも、俺はあのとき、お客さんにこう言ったんだ。

「村上だけじゃなく、これは打たれたピッチャーも褒めてやりたいね。真っ向勝負をよくやってくれた。ありがとう!」

 打たれたくないなら、臭い球で逃げてもありだったと思うけど、あそこで逃げたらプロ野球熱も冷めるぜ。記録に関係なく攻めたDeNA入江大生を俺はカッコいいと思った。

 打ちも打ったり、投げも投げたり。解説者も結果だけじゃなく、そういう戦いを褒めてあげてほしい。そういうロマンを感じる解説をしてほしいんだ。

第6章「近鉄コーチ時代」より。
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