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50季連続最下位からの脱出を目指す東大 指揮官不在の戦いで最下位から浮上のポイントは?

 

井手監督は病気療養中


2023年春。東大・井手監督は病気療養中のため、大久保助監督[右]が代理で指揮を執る。甲子園経験者の主将・梅林[左]も自覚十分だ[写真=矢野寿明]


 東大は今春のリーグ戦、指揮官不在での戦いとなる。2020年から母校を指揮する井手峻監督が昨年11月中旬の練習中に倒れ、病気療養中。この春、神宮におけるチームの指揮は、代理で大久保裕助監督が執る。

「井手さんのスタイルは学生主体。練習メニューも学生コーチに任せており、必要となった際にこちらからアドバイスをする方針に、変わりはありません」(大久保助監督)

 チーム幹部、そして部員全員による2つのLINEグループが伝達ツールとしてあり、井手監督からも節目でメッセージが入るという。

「ベンチでのさい配はすべて井手さんに任せていましたので、大変なところはありますが、私として、やれることをやる。私自身は、楽しみにしています。対戦する5つの大学に、やられっぱなしにならないようにしていきたい」(大久保助監督)

 東大は1998年春から50季連続最下位。この6位から脱出することが最大のテーマで、今春は「勝ち点2以上」を目指している。そこで、井手監督から示された3つの指針がある。

・投手陣はムダな四球を減らす
・内野手の失策はシーズン一ケタ以内
・打線は4得点

「四球と失策は失点につながり、相手に流れが傾いてしまうので、そこを抑えていきたい。1シーズンは最低でも10試合あるわけですから、無失策のゲームがないとクリアできない。ディフェンス強化は、発破をかけて取り組んでいます。最少失点に抑え、4点を奪えれば勝てる。1試合でチャンスは3〜4回はありますので、そこを確実にものにする」(大久保助監督)

 昨秋の明大との開幕戦は3対3の引き分け。唯一の勝利となった慶大1回戦は4対3。つまり「4得点」が勝利への目安だという。

 井手監督の就任以降「東大の野球」と言えば、機動力が定着している。昨春は17盗塁、秋は18盗塁。相手バッテリーを研究し、次の塁を狙う積極的な姿勢が徹底、確立されている。

「一塁けん制でアウトになっても、二盗を失敗しても一緒。それが、井手さんの信念です」(大久保助監督)

組織としての強さと成熟性


 最少失点で乗り切る上で、やはり、ポイントは投手力だ。リーグ戦通算2勝の右腕・井澤駿介(今年から社会人・NTT西日本でプレー)が卒業。大黒柱の穴を145キロ右腕・松岡由機(4年・駒場東邦高)、140キロ左腕・鈴木健(4年・仙台一高)の両輪が埋めることになる。

 昨秋まで4シーズン強肩捕手として活躍した松岡泰希(今年から社会人・明治安田生命でプレー)の後釜には、和田泰晟(4年・海城高)を起用。大久保助監督は攻守で信頼を寄せており、司令塔が抜けた部分も不安はない。

 チームを束ねる主将は静岡高時代、3年春のセンバツ甲子園を経験している梅林浩大だ。

「井手監督は常日ごろから口出しをすることはなく、学生の考えを尊重してくれる指導者でした。3年間の教えが根底としてありますから、監督不在でも、そこまで大きな不安は感じていません。全員で勝つためにはどうするべきかを日々、考えて取り組んでいます」

 梅林主将が掲げる方針は「組織としての強さと成熟性」。部員全員が、チームのために動くことを周知させている。名門・静岡高で培った精神的な部分を丁寧に説明し、対話路線で東大に落とし込む。練習のための練習ではなく、神宮で勝つための本物の練習を東大球場で実践し「戦う集団」へと成長している。

 大久保助監督は「梅林は真面目で、良い子。羽目を外したところを見たことがない(苦笑)」と全幅の信頼を寄せる。そして、こう続けた。

「勝ち点を取って、最下位を脱出したい」

 指揮官不在のチームを預かる大久保助監督は、東大における「勝ちパターン」を熟知している。1981年春にシーズン最多6勝を挙げ、4位へ躍進した「赤門旋風」当時の主将・遊撃手だった。ともに2020年から母校・東大を指導する井手監督の野球を、最も理解している。学生とともに、全力で白星をつかみにいく。

文=岡本朋祐 写真=矢野寿明
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