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1年目はファームで1試合登板のみ…侍ジャパン選出の宇田川優希を変えた「同僚の言葉」とは

 

ブルペンですさまじい投球


侍ジャパンで徐々に真価を発揮している宇田川


 侍ジャパンに選出されたオリックス宇田川優希の存在感が高まっている。

 宮崎強化合宿第2クール最終日となった2月23日。ブルペンに入ると、うなりを上げる剛速球とフォークが冴え渡った。落差の鋭い軌道に、150キロ近い球速で小さく落ちる軌道の2種類のフォークが低めにきっちり決まる。投手陣の目がくぎ付けになり、ダルビッシュ有(パドレス)も驚きの表情を浮かべていた。

 スポーツ紙記者は、「ダルビッシュのおかげです。宇田川は繊細な性格で、自分をさらけ出すのが得意ではない。侍ジャパンに選出されて実績のある投手たちばかりなので、気後れした部分があると思います。輪に溶け込めるか心配でしたが、ダルビッシュが手を差し伸べてくれたおかげで、表情が明らかに変わった。能力は投手陣の中でもピカイチです。侍ジャパンで重要な役割を託される可能性がありますし、キーマンになる存在と思います」と期待を込める。

精神的に楽になって


 加速度的に進化している。1年前は育成選手だったが、昨年のウエスタン・リーグで結果を残して7月28日に支配下昇格。19試合登板で2勝1敗3ホールド、防御率0.81とセットアッパーとして大活躍し、リーグ連覇、26年ぶりの日本一に貢献した。能力の高さを認められ、侍ジャパンにも選出されたが、宇田川は気後れしていたのかもしれない。今年の春季キャンプでは中嶋聡監督に調整不足を指摘され、苦言を呈されていた。WBC公式球の扱いにも試行錯誤し、宮崎強化合宿の当初は表情が硬かった。

 宇田川を気に掛けたのが、投手陣でリーダー格のダルビッシュだった。キャンプ初の休日となった20日に投手陣が全員参加の食事会が行われたが、ダルビッシュは自身のツイッターに、他の投手たちに囲まれた宇田川が中心で腕を組んだ写真を投稿。「宇田川さんを囲む会に参加させていただきました! 宇田川さん、ご馳走様でした!」とつづり、インスタグラムに「#宇田川JAPAN」のハッシュタグをつけていた。

 ダルビッシュをはじめとして、他の投手たちと距離が縮まったことで精神的に楽になったのだろう。宇田川の投げるボールの質が明らかに変わった。ブルペンで躍動感あふれるフォームから投げ込まれる直球、フォークは威力十分。表情も自信を取り戻して、侍ジャパン初陣となる25日のソフトバンク戦(サンマリン)では7回途中から登板し、1回1/3を無失点に抑えた。

「真っすぐだけで十分」


 宇田川は新人時代の2021年にファームで1試合しか登板していない。昨年も春先は制球が不安定だった。週刊ベースボールのインタビューで、「プロのバッターを相手に投げるのが怖かったんです。特に昨年(21年)は結果が出ず、バッターが相手になると自分のピッチングができなくて。甘い球を投げれば打たれる。だから、厳しいコースに投げないといけないと勝手に強く意識してしまって。それで腕が振れなくて、フォアボール。ストライクを取りにいくと打たれる。なんで、こうなるんだろう……と本当に悩んでいて……」と明かしている。

 自分の能力を信じきれない。心境の変化は、チームメートからかけられた言葉がきっかけだった。

「今年(22年)もファームの初登板は打ち込まれて途中降板だったんですけど、そんなときに西村凌さん(22年限りでオリックス退団)が言ってくれたんです。『真っすぐだけで十分だよ』と。『お前は怖いと思っているかもしれないけど、バッターのほうが怖いから。それだけ球威のあるボールを投げているよ。だから思い切って投げていけよ』って。その言葉をもらって、ゾーンで勝負しようと思えるようになりました。そこから怖さがなくなり、楽しめるようになって。だから今年(22年)に入ってからなんです。バッターを相手に投げたい、と思えるようになったのは。それで結果も出てきたんです」

 サクセスストーリーを駆け上がっている24歳右腕が、国際大会でどんな投球を見せてくれるか楽しみだ。

写真=BBM
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