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【高校野球】28年ぶりの夏の甲子園へ士気が高まる享栄 「3本の矢」で目指すは全国制覇

 

「3人が持ち味を出していくことが必要」


享栄高の152キロ左腕・東松はNPBスカウト注目の存在だ


 3月5日。強豪復活へのターニングポイントとなったはずだ。享栄高(愛知)は智弁和歌山高との練習試合を、5対0で勝利。3月18日に開幕するセンバツを控えたV候補校に勝ち切ったのは、大きな価値がある。

 2018年秋から享栄高を率いる大藤敏行監督は09年夏に母校・中京大中京高を全国制覇へと導いた名将だ。昨年10月16日の練習試合では、近畿大会を控えた智弁和歌山高に3対11で敗退。一冬を越え、成長した姿を見せた。

「投手陣は、そこそこ投げるので……。自信になると思います」

右腕・中井はゲームメーク力に長ける


 打線は0対0の6回裏、智弁和歌山高の右腕・清水風太(3年)から打者10人で一挙5点を挙げた。投げてはドラフト152キロ左腕・東松快征(3年)が5回1安打無失点に抑えてリズムを作ると、右オーバーハンドの中井創友(3年)が1イニングを投げ、7回からは最速147キロの右サイド・磯部祐吉(3年)が3イニングを打者9人、完璧に封じた。3投手で伝統の強力打線を、1安打に抑えたのである。

 享栄高グラウンドには東松の23年の対外試合初登板を視察しようと、NPB9球団18人のスカウトが集結。担当スカウトのほかに、球団幹部も同行するチームもあり、ネット裏は熱気に包まれていた。東松は言う。

「見られたほうが、良い緊張感を持って投げられる。良いイメージで、良い環境で投げることができました」

右サイド・磯部はインステップ気味からキレの良いボールを投げ込んでくる


 享栄高は昨秋、東邦高との県大会3回戦で敗退。夏一本に照準を絞り、練習を重ねているが、エース1人で激戦区・愛知を制することは難しい。大藤監督はその先も見据える。言うまでもなく、目標は「全国制覇」だ。

「(愛知のシード校で)6つ、(夏の甲子園で)6つ。12勝するには、3人が持ち味を出していくことが必要です」

 ドラフト1位を目指す東松に対して、大藤監督は「意欲的。苦しいことを、苦しく感じずにやる」と、意識の高さを認める。ただし、絶対的な大黒柱に頼るような空気感にしたくないのが、本音である。全国大会を勝ち上がるには中井、磯部に「エース番号を奪うくらいの意識で取り組め」と発破をかけ続けており、冬場の成果をこの日に示したのである。

 磯部は「自分が夏にエースになる」と、東松に対抗心むき出し。中井を含めた3年生トリオは、高いレベルで競争を展開している。大藤監督は「三本の矢」を育成するのが理想だ。

愛知大会へピークを持っていく下準備


 享栄高は1995年を最後に夏の甲子園から遠ざかっている(春のセンバツは2000年)。大藤監督が就任して以来、メキメキと力をつけ、今夏へかける思いは相当だ。まずは、今春の県大会、東海大会優勝で弾みをつける。6月には大阪桐蔭高、花巻東高、智弁和歌山高、報徳学園高、横浜高、東海大相模高など、甲子園常連校との練習試合が控える。7月1日に開幕する愛知大会へピークを持っていく下準備に、抜かりはない。主将・高田洸希(3年)を中心に、士気は高まっている。

「勝っていないチームなので、勝つ喜びにより、自信を植えつけていきたい。東海大会に進出して、他県の強豪校に競って勝つことが、チーム力になっていく。真面目で一生懸命やる子が多い、良いチームです。野手の選手層も厚くしていきたいと思います」(大藤監督)

 大藤監督が率いる享栄高は28年ぶりの甲子園へ、勝利への執念を前面に一体感で臨む。

文=岡本朋祐 写真=佐藤真一
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