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【大学野球】2020年秋以来の天皇杯奪還へ ロスと沖縄で1年間を戦い抜く足元を固めた早大

 

本場のベースボールを体感できなくても


早大は3月1日から沖縄・浦添キャンプを開催。福岡工大とのオープン戦[8日、ANAボールパーク浦添]を、8対3で勝利した[写真=BBM]


 雨降って地固まる。

トップアスリートに求められるのは「対応力」である。イレギュラーな展開にも、惑わされることはあってはらない。

 早稲田大学野球部は2月24〜3月2日(現地時間)までロサンゼルス遠征を行った。9年ぶりの開催。現地の大学との3試合のオープン戦が予定されていたが、天候不良により、全カードが中止となった。実戦を通じて、本場のベースボールを体感することはできなかったが、目的はゲームをすることだけではない。異国の文化、環境を肌で感じることは、学生にとってすべてが財産なのである。

 1905年。早稲田大学野球部は日本の単独チームとして、初めて米国遠征を実現した歴史がある。2019年から母校を率いる小宮山悟監督は、大学3年から2年間、石井連藏監督(故人)の薫陶を受けた。同監督はかねてからロサンゼルス・ドジャースの元オーナーであるピーター・オマリー氏、南カリフォルニア大の名将・ロッド・デドー氏(故人)と親交が深かった。早稲田大学野球部OBのアイク生原氏(故人)は、かつて単身渡米し、その後、ドジャースの雑用係から信頼を得て、オマリー氏の専属秘書を歴任。1901年創部の早稲田大学野球部とロサンゼルスとは、特別な関わりがある。

ピーター・オマリー氏[ロサンゼルス・ドジャース元オーナー]による晩餐会。現地では本場のベースボールを肌で感じた[写真提供=早稲田大学野球部]


 オープン戦は中止となったが、ドジャー・スタジアム、エンゼル・スタジアムの見学、ピーター・オマリー氏の晩餐会、故ロッド・デドー氏、故アイク生原氏の墓参のほか、充実の時間を過ごした。

「本来は練習、試合でも成果を上げたいところでしたが……。天気に恵まれているはずのロスで40年ぶりの悪天候だ、と。私も何度も来ていますが、過去にないレアケースでした。オープン戦は実現できませんでしたが、それ以外の行事を踏まえて、半分は達成できたのかな、と。エンゼル・スタジアムのスタジアムツアーでは、ボビー(バレンタイン氏、元ロッテ監督ほか)に、ガイド以上のガイドをしていただきました。学生たちは、MLBのとんでもないスケール感に圧倒されていました。春のリーグ戦で『結果』として残し、今回の遠征が『成功』と言えるよう、沖縄で遅れを取り戻さないといけない」(小宮山監督)

エンゼル・スタジアム見学ではボビー・バレンタイン氏がスタジアムを案内した[写真提供=早稲田大学野球部]


 ロス遠征のメンバー21人は東京へは戻らず、3月4日にキャンプ地の沖縄・浦添に入った。ロサンゼルスから羽田を経由して那覇に向かう際、乗り継ぎがうまくいかず、羽田空港で足止め。スケジュール変更が余儀なくされたが、これも長距離移動が伴う遠征の常だ。すべて「想定内」として、受け止めるしかない。

キャンプ打ち上げ後も続く遠征


 ロス組は3月1日から沖縄に先乗りしていた24人と合流。浦添キャンプもコロナ禍で2019年以来の開催である。8日には23年の初の対外試合となる福岡工大との初のオープン戦(ANAボールパーク浦添)が行われ、早大が8対3で勝利した。

「沖縄組の練習を見ていた金森(金森栄治)助監督によれば『打ち込んでいます。バットもよく振りました』と報告がありました。沖縄組はロス組に負けていられないでしょうから、良い競争を期待しています」(小宮山監督)

 沖縄では5試合のオープン戦が組まれており、16日にキャンプ打ち上げるが、帰京せず、同大との定期戦など、関西、東海遠征が24日まで続く。小宮山監督が「やれるうちに、やっておきたい」と語るのも、現場の本音だ。

 2020年以降、コロナ禍でさまざまな活動制限があった。ようやく制約がなく、ほぼ通常通りの調整ができる。当たり前が、当たり前ではなかった3年あまり。これほどありがたいことはない日常を、あらためて実感している。

 東京六大学リーグ戦は4月8日に開幕(早大は15日からの東大戦が開幕カード)する。早大が目指すは、20年秋以来の天皇杯奪還。ロサンゼルスと沖縄で、1年間を戦い抜く足元をしっかりと固めたチームは、どんな状況にも柔軟に対応できる準備を整えている。

文=岡本朋祐
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