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ヌートバーの実力は想像以上?「将来はメジャー代表する選手」の期待が

 

伸びしろだけの25歳


侍ジャパンで大きな戦力となっているヌートバー


 侍ジャパンの切り込み隊長を務めるのがラーズ・ヌートバー(カージナルス)だ。父がアメリカ人、母が日本人の25歳。侍ジャパン初となる日系人MLB選手は新風を吹き込み、日本の野球ファンの心をつかんでいる。

 WBC1次グループの初戦となった3月9日の中国戦(東京ドーム)に、「一番・中堅」でスタメン出場。家族も応援に駆け付けた中、リードオフマンとして打線を勢いづけた。初回の第1打席で初球を振り抜いて中前打。先制点の足掛かりを作った。4回にも一塁内野安打。四球も2つ選ぶなど、6打席で5度出塁とチャンスメークした。外野の守備でも3回にセンター前方の打球をスライディングキャッチ。先発の大谷翔平が両手を挙げて好守を称えた。10日の韓国戦でも3点を追う3回に中前適時打を放ち、5回一死一塁では中堅前の当たりをダイビングキャッチし、相手のチャンス拡大の芽を積んだ。

 NPBでプレー経験がないため、今回の代表選出に驚きの声が上がったが、実力は申し分ない。2021年6月にカージナルスでメジャー初昇格を果たすと、昨季は108試合出場で打率.228、14本塁打、40打点、4盗塁をマーク。確実性を磨く必要があるが、出塁率.340と決して粗い打者ではない。変化球への対応能力が高く、選球眼もいい。打球速度はメジャートップクラスと伸びしろだらけだ。

 メジャーを取材するスポーツ紙記者は、「パワーとスピードを兼ね備えたプレースタイルで、打率3割、30本塁打をクリアできる可能性を十分に秘めている。守備でも外野の全ポジションを守り、強肩が魅力です。栗山英樹監督でなかったら侍ジャパンに選出されなかったかもしれませんが、間違いなくチームにプラスアルファをもたらす選手です。メジャーを代表する選手になるでしょう」と太鼓判を押す。

 魅力はプレーだけではない。明るい性格のムードメーカーで、カージナルスでもファンの人気は高い。打席に立つたびに「ヌーーート!」と熱い声援が送られる。日本語が満足にできるわけではないが、侍ジャパンのメンバーとは強い絆で結ばれている。練習に合流した際、胸に「JAPAN」、背中にアメリカ国旗と日本国旗に加え「たっちゃん」の文字が記された「たっちゃんTシャツ」をチームメートが着て歓迎の意を示したときに、満面の笑みを浮かべていた。メジャーでも見せる「ペッパーミル」(こしょうをひく動作)のパフォーマンスは侍ジャパンの間でも浸透。ムードメーカーとしても不可欠な存在だ。

 今年1月に自身のインスタグラムを更新した際は、06年のWBC第1回大会で大塚晶文(当時レンジャーズ)がキューバ戦で最後の打者を三振に仕留め、日本の選手たちが優勝を喜ぶ映像をストーリーにアップしている。

侍ジャパンへの強い思い


 巨人大久保博元打撃チーフコーチは週刊ベースボールのコラムで、「彼の代表入りに大賛成です。彼のツイッターでは代表入りに関し、第1回WBCで日本が優勝したときの動画をリンクしたみたいですよね。これには、日本への思いが入っていると感じます。アメリカで生活していても、どこか日本とつながってくれている。それがうれしいじゃないですか。絶対に日本のために精いっぱいプレーしてくれるはずです。たとえ日本語はそこまで流暢でなくても、心は同じなわけです。代表がこういうグローバルな選手たちも受け入れるようになると、必ず日本の選手たちの実力向上にもなっていくはずです」と綴っている。

 侍ジャパンでの応援歌も作られた。その歌詞にヌートバーの覚悟が詰まっている。

「日の丸を背負い いざ世界へ立ち向かえ 大和魂見せてやれ 戦え侍」

 試合前の国歌斉唱では、思いを込めて君が代を歌っていた。日本を思う気持ちは、誰よりも強い。

写真=BBM
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