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ヌートバーが実力で過小評価を覆した 「最高のリードオフマン」の声が

 

価値あるプレーを連発


侍ジャパンで実力を存分に発揮しているヌートバー


 想像以上の活躍というのは失礼だろう。WBCで侍ジャパンの切り込み隊長を務めるラーズ・ヌートバー(カージナルス)だ。メジャーで将来を嘱望された選手であることを、パフォーマンスで証明している。

「一番・中堅」でスタメン出場した1次ラウンド1戦目の中国戦。初回の初球を振り抜いて中前打を放って先制点を演出すると、3回一死の守備ではセンター前に飛んだ浅い飛球に猛ダッシュしてスライディングキャッチ。先発の大谷翔平が両手を上げて称えた。その後の打席でも全力疾走が相手守備の失策を誘うなど、6度の打席で5度出塁と見事にチャンスメークした。

 2戦目の韓国戦でも好守でチームを救った。1点リードの5回一死一塁で、キム・ハソンの打球に猛チャージ。ダイビングキャッチで好捕した。安打になっていれば韓国の好機が拡大して試合の行方が分からなかっただけに、価値あるプレーだった。打撃でも3点を追いかける3回に逆転の口火を切る中前適時打。6回に背中に死球を受けた際は厳しい表情で相手投手を見つめ、強い口調で叫んだ。お立ち台では「ちょうどこっていたところに当たってほぐれたので良かった」と死球の場面を振り返って笑いを誘い、「ニッポン、ダイスキ!! ミンナ、アリガトー!」と叫んでファンの心をつかんだ。

抜群の出塁能力


 侍ジャパン初となる日系人メジャー・リーガーで選出されたときは、大きなサプライズだった。多くの野球ファンが選出を予測していなかった部分もある。NPBに世界で通用する実力を持ったリードオフマンがいないわけではない。塩見泰隆(ヤクルト)はパンチ力と俊足を兼ね備えたスケールの大きいプレーヤーで、2021、22年とチームのリーグ連覇に大きく貢献。近本光司(阪神)も能力は申し分ない。盗塁王3度獲得と俊足でチャンスメークし、21年には最多安打を獲得するなど、広角に安打を打ち分けるミート技術は高い。

 WBC本戦では塩見、近本が選出から漏れ、外野手はヌートバー、鈴木誠也(カブス)、近藤健介(ソフトバンク)、吉田正尚(レッドソックス)の4人が選出された。鈴木は左脇腹痛で大会前に出場辞退したが、外野ならどこでも守れるヌートバー以外に本職の中堅がいなかったため、「塩見と近本のどちらかは選出するべきだったのでは」と選考に不安視の声も上がった。

 だが、ヌートバーの1次ラウンドの活躍で不安の声を一掃した。4試合出場で14打数6安打、打率.429。四死球はチームトップタイの5つと選球眼の良さを発揮し、出塁率.579と申し分ない成績を残した。

今後の戦いのキーマン


 準々決勝のイタリア戦に勝てば、決勝ラウンドはアメリカ、ドミニカ共和国など優勝候補と激突する可能性が高い。ヌートバーは大谷翔平(エンゼルス)と同様に、メジャーで対戦している投手の情報を経験値として持っていることが大きな強みだ。

 スポーツ紙記者は、「当初は大谷の一番起用を予想する声もありましたが、三番に据えて走者を置いた場面でポイントゲッターになっている。これも一番・ヌートバー、二番・近藤という出塁率の高い2人が機能しているからこそ。ヌートバーが最高のリードオフマンであることを侍ジャパンの仲間たちも、ファンも認めています。一番で出塁すれば、高い確率で得点できる。今後の戦いでキーマンであることは間違いない」と期待を込める。

 ヌートバー発案の「ペッパーミル・パフォーマンス」はすっかり定着し、ファンもスタンドで行うなど大流行している。覇権奪回に向け、このパフォーマンスを何度も見たい。

写真=BBM
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