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酔いどれの鉄腕

大阪球場での入団発表のあと契約金の1700万円をどう渡すか聞かれた。日大の仲間と飲みたいから100万円は現金でもらったよ/佐藤道郎『酔いどれの鉄腕』

 

 元南海-大洋の佐藤道郎氏の書籍『酔いどれの鉄腕』が2月4日にベースボール・マガジン社から発売された。

 南海時代は大阪球場を沸かせたクローザーにして、引退後は多くの選手を育て上げた名投手コーチが、恩師・野村克也監督、稲尾和久監督との秘話、現役時代に仲が良かった江本孟紀門田博光、コーチ時代の落合博満村田兆治ら、仲間たちと過ごした山あり谷ありのプロ野球人生を語り尽くす一冊だ。

 これは不定期で、その内容の一部を掲載していく連載である。

新幹線で周りが泥棒に見えた


『酔いどれの鉄腕』表紙


 本の内容をちょい出ししている連載。

 今回は1969年秋、日大時代の佐藤道郎さんが、南海ホークスに1位指名されたあとの話だ。

 東京に実家に野村克也兼任監督が来てくれた話は書籍で読んでもらうとして、今回は大阪での入団会見の話だ。

 ちなみにこの年のドラフト1位は、三沢高の太田幸司、早大の谷沢健一荒川堯らがいた。

 入団発表は大阪球場でやった。

 そのあとスカウト部長から「契約金を渡したいんですけど、現金がいいですか、小切手がいいですか」と言われ、「小切手がいいけど、日大の連中とお祝いしたいんで、100万円は現金でもらっていいですか」とお願いした。

 そんな大金まとめて持ち歩いたことなかったから、新幹線に乗ってるときはちょっとドキドキしたよ。おかしな動きをするやつがいたら、俺の金を狙ってるような気がしてね。

 契約金は1700万円。谷沢健一(早大。中日1位)と、新宿の『熊の子』という大学野球の選手のたまり場みたいになっている飲み屋で会ったとき、あいつは2000万円もらったと言って、上田次朗(東海大。阪神1位)もやっぱり2000万円だった。

 2人には「お前はそれしかもらってないのか」と言われちゃったよ。いろいろな人に聞いたら、その前は大卒のドライチなら契約金3000万円とかも当たり前だったらしい。黒い霧事件(1969年から1970年に球界を騒がせた八百長疑惑事件)で金額が抑えられたみたいだね。

 帰ったら15人くらい日大の仲間を呼んで、新宿のチャイナタウンに飲みに行った。仲間は背広やガクランといろいろだったけど、俺はおふくろに「こういうときは着物でしょ」と言われて和服だった。

 当時は痩せていたから、おなかにタオルを入れて膨らましてね。着物って、多少、お腹が出てないと決まらないんだ。

 でもさ、当時だって着物で街を歩いている人は多くない。われながら、なんだかヤクザ映画みたいだなって思っていた。
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