有言実行でアピール

　昨年12月に非公開のオンライン形式で開催されたNPB史上初の「現役ドラフト」。才能が開花していない選手、出場機会に恵まれていない選手にチャンスを与え、球界の活性化につなげる新たな取り組みで、各球団の12選手が新天地に移籍した。

　FAで移籍した選手、トレードで新加入した選手たちとは立ち位置が違う。結果をすぐに出さなければいけない背水の陣で、彼らの戦いは2月の春季キャンプから始まっている。その中で、期待以上の結果を残して開幕一軍入りが濃厚の選手たちがいる。彼らの活躍はファームで伸び悩んでいる選手たちに勇気を与えるだろう。

　筆頭格が楽天から巨人に移籍したオコエ瑠偉だ。3月16日のソフトバンク戦(PayPayドーム)では2回二死一、二塁の好機で、ガンケルのツーシームを中前にはじき返す先制の適時打。2月17日の紅白戦から実戦で13試合連続安打をマークし、「一番・左翼」でのスタメン出場が続いている。結果が出ることで自信を深めているのだろう。体のキレを取り戻し、スイングが鋭い。俊足も大きな武器だ。開幕一軍どころか、開幕スタメンも見えてきた。

　入団会見では、「ここ数年は思うように結果を出せていなかったので、楽天さんにも恩返しという気持ちを持って、ジャイアンツでチームに貢献できる結果を出したいです。走塁、守備をしっかりやりつつも、打てなければ一軍にいるのは難しい。隙のない野球を心がけたいです」と語っていたが、有言実行でアピールし続けている。

大ブレークの予感が漂う左腕

　ソフトバンクから阪神に移籍した大竹耕太郎も、開幕ローテーション入りがほぼ当確となった。15日のDeNA戦(横浜)で4回1安打無失点の快投。5日のオリックス戦(甲子園)は3回4失点と集中打を浴びたが、きっちり修正した。ソフトバンクでは先発で結果を残せず、ファーム暮らしが長かったが、阪神移籍後は2月の春季キャンプで紅白戦も含めて3試合登板で9回無失点と抜群の安定感でキャンプMVPに選ばれた。岡田彰布監督の信頼が厚く、大ブレークの予感が漂う。

打撃で輝きを放つ強打者

　その阪神から西武に移籍した陽川尚将は打撃で輝きを放っている。「五番・左翼」でスタメン出場した15日の日本ハム戦(エスコンF)で、7回一死満塁から玉井大翔のシュートに食らいついて先制の左前適時打。3試合連続適時打を放ち、勝負強さを発揮している。内外野を守れるユーテリティーも強みで、このまま結果を残せば開幕スタメンを射止める可能性が十分にある。


　DeNAから中日に移籍した和製大砲・細川成也も覚醒が待たれる。貧打に苦しむチーム事情の中、春季キャンプから実戦で豪快なアーチを連発。立浪監督から「チームMVP」に選ばれた。球界屈指のパワーを誇るだけに、確実性を身につければ大化けが期待できる。和田一浩打撃コーチの指導を受け、和製大砲は名古屋で大輪の花を咲かせられるか。

　野球評論家の高木豊氏は、週刊ベースボールの現役ドラフトの企画で陽川、細川への高評価を語っている。

「野手では陽川尚将がやってくれそうな気がします。今季32歳は現役ドラフト選手最年長。阪神が出したのには驚きましたが、右のスラッガーとして西武で活躍できると思います。内外野のどちらでも守れますし、左投手が先発のときはスタメンの出番もあるでしょう。パ・リーグなら指名打者もありますし、豪快なバッティングでどんどんアピールしてもらいたいですね。松井稼頭央監督の期待も大きいと思います」

「細川成也も大きな戦力になりそうです。中日の課題は言うまでもなく得点力。長打力も不足していますから、一発が魅力の細川は打ってつけのチームに移籍したと思います。中日の外野陣は岡林勇希、大島洋平が当確の上、新助っ人のアキーノにアルモンテ、鵜飼航丞もいますからレギュラー争いのハードルは高いですが、できれば外野の一角を担ってほしい。右の代打の一番手になるのかもしれませんが、細川は4打席を任せてナンボの選手。代打のタイプではなく、スタメン起用が結果を残せるとは思いますが……」

　他にも、オリックスからロッテに移籍した「声出し番長」こと大下誠一郎が打撃でアピールし、安田尚憲と三塁のレギュラー争いに名乗りを上げている。現役ドラフトで「一番人気」と言われた日本ハムからソフトバンクに移籍の古川侑利も楽しみな存在だ。投手陣の層は厚いが、開幕一軍の切符をつかみたい。

写真＝BBM