選手個々の能力は高い
今季から広島を率いる新井監督。5年ぶりの優勝を目指す
3月30日、
日本ハム対
楽天(エスコンF)で開幕したプロ野球。今季は
阪神、広島、
西武、
ロッテの4球団が新監督で挑む。
新井貴浩監督が就任した広島はオープン戦で4勝9敗3分。3つの引き分けをはさんで7連敗を喫するなど、2015年以来8年ぶりとなるオープン戦最下位となった。打線の並びや、救援陣で勝利の方程式が固まっているとは言えない。ただ、決して悲観する必要はないだろう。
他球団のスコアラーは警戒を口にする。
「個々の選手の能力で言えば、上位の球団と遜色はない。良い打者がそろっているし、新外国人の
マット・デビッドソンが日本の野球に適応できる雰囲気がある。リーグ3連覇したときの広島は切れ目のない打線で一気に大量得点を奪う怖さがあった。近年は足を使った嫌らしさがなかったですが、新井監督は機動力に重点を入れているので変わってくるでしょう。救援陣が整えば、優勝も十分に狙えると思います。ハマれば強いですよ」
16〜18年に球団初のリーグ3連覇を達成したが、19年以降は4年連続Bクラスと低迷。昨年は4月終了時点で16勝12敗の貯金4と好スタートを切ったが、交流戦で5勝13敗と12球団最下位に沈んで大きく失速した。
西川龍馬、
大瀬良大地と投打の軸が戦線離脱したことも大きな痛手だった。シーズン終盤にクライマックスシリーズ争いで
巨人を猛追したが、最後は力尽きる形に。66勝74敗3分と3年連続負け越しが決まった。
黄金時代を支えた主力だった選手たちに、いつまでも頼るわけにはいかない。ショートの
小園海斗、捕手に専念する
坂倉将吾はチームの軸にならなければいけない選手だ。
田村俊介、
韮澤雄也と主力を脅かす若手も台頭してきている。投手陣ではドラフト3位の
益田武尚が先発ローテーション、ドラフト5位の
河野佳がセットアッパーとしてオープン戦で好投を続けていた。
「抜いてプレーする選手はいない」
昨年まで阪神でバッテリーコーチを務めた
藤井彰人ヘッドコーチは、巻き返しを狙うチームに手ごたえを感じている。3月下旬に週刊ベースボールのインタビューで、以下のように語っている。
「選手たちに向けては、就任会見のときに『時に監督に代わって厳しく』というような話もしました。でも実際、そういう場面はまだないんですよね。みんなね、一つひとつ一生懸命にやるので、抜いてプレーする選手が1人もいないんですよ。それが広島の伝統で、当たり前になっている。聞いていたとおりでした。もし抜いているヤツがおっても、周りが注意する。選手同士でやってくれるので、僕の出る幕はなさそうですね」
「僕は新井監督に声を掛けてもらって今、ここにいますが、このチームって『新井監督を胴上げしたろう!』と思っているのが最大の強みやと思います。選手たちも言葉にしていますし、普段からも感じるところも大きい。昨年まで4年連続Bクラスですが、そもそもまず素直に、そんなチームじゃないんですよね。昨年の話で言えば、阪神は特に序盤戦、本当に負けていたので、強く映っていましたし」
V奪回のキーマン
新外国人のデビッドソンは日本球界に適応しそうだ
オープン戦は苦しんだが、最終戦となった26日の
ソフトバンク戦(マツダ広島)で今季の目指す野球が見えた。
初回に西川がチーム37イニングぶりの右前適時打で先制点を奪うと、5回に
ライアン・マクブルームが左越え2ラン、32歳の誕生日を迎えたデビッドソンが逆方向の右中間に2ランと一発攻勢で得点を重ねる。13安打8得点と効果的に点を奪い、投手陣も先発の玉村昇梧が5回1安打無失点の快投。勝利後のハイタッチを交わすナインに笑顔があふれた。
WBCの1次ラウンドで腰痛により、侍ジャパンを離脱した守護神・
栗林良吏も開幕から問題なく投げられる。今年は赤ヘルの逆襲に期待したい。
写真=BBM