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【高校野球】「強化」と「結果」を両立させる慶応 投打に激しい競争でレベルアップ

 

センバツから持ち帰った課題


慶応高の三番・渡邉千は県大会4回戦で、2試合連続の先制本塁打を放った


 試しながら、勝ち上がる。

 慶応高は「強化」と「結果」を両立させている。向上高との神奈川県大会4回戦(4月22日)を6対1で勝利し、8強進出を決めた。

 今春のセンバツで、仙台育英高(宮城)との初戦(2回戦)を、延長10回タイブレークの末に惜敗(1対2)。昨夏、悲願の東北勢初制覇を遂げた強豪校から、実際に対峙しなければ感じない課題を持ち帰った。

 慶応高・森林貴彦監督が今夏までに攻撃陣に与えたテーマは「打球速度」だ。

「仙台育英の3投手(左腕・仁田陽翔、右腕・高橋煌稀、右腕・湯田統真)と対戦することとで、一つの『基準』になった。あのレベルの高い投手のボールを、いかにしてはじき返すか。スイングスピード、ボールの見極め、タイミングの取り方も必要です」

 活動拠点である日吉台グラウンドでは、打撃練習の中で実戦を想定した場面をつくり、一発で仕留めるメニューを繰り返す。「追い込まれて当てにいくのではなく、初球から見るのでもなく、自分の打てる球を広げていく」(森林監督)。素振りでスイング力を上げるのではなく、ボールに対してしっかりバットを振っていく中で「打球速度」を追い求めている。

 一冬を越えて台頭してきたのが、右のスラッガー・渡邉千之亮(3年)だ。昨秋は背番号17の控えだったが、センバツ(同17)では三番・右翼で先発出場。今春の県大会では背番号7を着け、菅高との初戦(3回戦)で先制ソロ、向上高との4回戦でも1回裏に先制3ランを放った。5回裏の第3打席ではセンター右に運び、50メートル走6秒3の俊足を飛ばして、判断良く二塁を陥れた。6回表の守備では、後方の打球に対して好捕。攻守走すべてで、存在感を見せた。6回裏の第4打席では顔面付近に死球を受け、すぐに救急車で搬送されたが、大事には至らなかった。

 中学時代は取手シニアでプレー。同チーム、高校を通じて先輩にあたる柳町達(慶大−現ソフトバンク)を尊敬しており、夏へ向けて打線のキーマンとなっていきそうだ。昨秋は上位にいた主将・大村昊澄(3年)、正捕手・渡辺憩(3年)を下位に据え、打順もベストの布陣を模索中。センバツでは五番・三塁で先発した清原勝児(2年)が背番号15の控えに回るほど、チーム内競争が激化している。

投手陣も新戦力が台頭


慶応高の2年生左腕・鈴木佳は急成長中。エース争いに名乗りを上げている


 投手陣も新たな戦力が出てきた。2年生左腕・鈴木佳門だ。背番号18を着けたセンバツでは登板機会がなかったが、県大会でチャンスが与えられた。向上高との4回戦では6回1失点で勝利投手と、森林監督の期待に応えた。

「ドッヂボールを投げる練習をしてきました。大きいボールを速く投げる中で、体の使い方を学びました。上半身に頼っていたんですが、足も使えるようになりました」

 身近にいるライバルの存在も大きい。仙台育英高とのセンバツ2回戦で先発して8回1失点と力投した右腕・小宅雅己とは同級生だ。

「焦りはありませんでしたが、自分には良い刺激になっています。同じ栃木県出身なので小宅を目標にして、抜かせるようにしたい」

 センバツで先発・小宅を救援したエース右腕・松井喜一(3年)に、県大会4回戦でリリーフした左腕・村上迅太(3年)、同3回戦で先発した右腕・飯田康太郎(3年)もおり、高いレベルで切磋琢磨している。

 4月29日の準々決勝では藤嶺藤沢高と顔を合わせる。2018年以来の春夏連続甲子園へ、森林監督が指揮する慶応高に抜かりはない。

文=岡本朋祐 写真=大賀章好
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