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ロッテが下位予想を覆して首位発進 大胆な起用法の吉井理人監督に、「名将」の予感が

 

546日ぶりの単独首位浮上


今季からロッテを率いている吉井監督


 ロッテが強い。シーズン前の順位予想では、野球評論家の中で下位予想も少なくなかったが、前評判を覆す快進撃を繰り広げている。4月23日のソフトバンク戦(ZOZOマリン)でソフトバンクに同一カード3連勝。開幕カードで3連敗を喫した相手に、見事にやり返し、546日ぶりの単独首位に立った。続く西武との2連戦で初戦を落としたが、2戦目は先発の小島和哉が7回1失点の快投で2対1と勝利。貯金を今季最多タイの5に増やし、再び単独首位に浮上した。

 現在のロッテでポジションが固定されているのは主将の中村奨吾のみ。他のポジションはコンディションや対戦相手との相性を考慮してメンバーが代わる。一塁は左翼との併用で四番として期待が大きい山口航輝、長打力が魅力の井上晴哉、攻守で貢献度が高い茶谷健太を起用。捕手は昨年ファーム暮らしが長かったかつての正捕手・田村龍弘佐藤都志也が中心だが、投手との相性を見極めて起用法に柔軟性がある。19日の日本ハム戦(エスコンF)で今季初登板した森遼大朗が5回1/3を2失点の粘投でプロ初勝利を挙げたが、21年5月18日のオリックス戦(京セラドーム)以来701日ぶりのスタメン捕手に抜擢された江村直也の好リードも見逃せない。

 遊撃も打撃好調の藤岡裕大、ドラフト2位の友杉驚輝を競わせ、三塁の安田尚憲も打撃で結果を求められる。外野の3枠も覚醒の時を迎えようとしている藤原恭大以外は流動的だ。救援も益田直也澤村拓一の起用法を固定せずに相手打線との兼ね合いを考えながら、セットアッパー、抑えで登板させている。

自然体で臨む姿勢


 今年から就任した吉井理人監督はWBC日本代表の投手コーチを務めていたため、チームに合流したのは開幕直前だった。不安の声が上がったが、選手たちと積極的にコミュニケーションを取り、勝敗に一喜一憂せず自然体で臨む姿は変わらない。日本ハム、ソフトバンクで計9年間投手コーチを務め、19年からロッテ投手コーチに就任。昨年はピッチングコーディネーターを務めた。14年から筑波大学の大学院(人間総合科学研究科博士前期課程体育学専攻野球コーチング論研究室)で学び、修士号を取得するなど、科学的知見に基づいた野球理論に定評がある。

 吉井監督が重視しているのは選手のコンディショニング、選手自身が「気づく力」、「考える力」だ。21日からのソフトバンク3連戦は試合前の練習をすべて自主練習に切り替えた。23日の同戦ではリードオフマンとして牽引してきた藤原を完全休養。「一番・右翼」に抜擢された平沢が見事な活躍でチームを勝利に導いた。

挑戦がチームの強み


 吉井監督は今年2月に週刊ベースボールのインタビューで、こう語っている、

「プロ野球はシーズンも長いですから。143試合を戦うリーグ戦でトーナメントではない。失敗しても取り返す機会は多くあります。シーズンが終盤になるほど、短期決戦の色が濃くなっていきますが、そこに向けて失敗を恐れずにやっていけるか。普段からトライしていくこと。その積み重ねが、シーズン終盤の大一番につながっていく。『失敗してはダメ』という考えはなくしていきたい。そう思っています」

「何せ、われわれは下手くそなチームで未熟なチームです。監督の僕だって素人なんですから(笑)。だから挑戦なんですよ。それこそが、マリーンズの強み。若くて、ポテンシャルを持っている選手が大勢います。岩下、種市ら昨年、故障から復帰した投手もいる。岩下、種市の2人も今年は良い場面での起用する可能性も当然あり、まだまだ伸び盛りなピッチャー。彼らを含めた選手たちの力を引き出せなかったら私の責任です。そんなポテンシャルを持った若い選手たちの可能性に大いに期待しています」

 各ポジションでハイレベルな競争を繰り広げ、結果を出す選手たちの表情に自信がみなぎる。その光景を温かい目で見守る吉井監督の姿が。18年ぶりのリーグ優勝を目指す指揮官に「名将」の雰囲気が漂う。

写真=BBM
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