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首都大学リポート

現在3位につけている筑波大 好調の村上滉典が2戦連続となる完投勝利【首都大学リポート】

 

打たせて取る投球が持ち味


今季好投を見せている筑波大・村上滉典


【4月29日】一部リーグ戦
筑波大9−2武蔵大
(1勝)

 首都大学リーグ第5週1日目。前週は桜美林大を連勝で下して勝ち点を挙げた筑波大。武蔵大との1回戦には必勝を期し、今季好調の左腕・村上滉典(4年・今治西高)を先発のマウンドへ送った。

 桜美林大との2回戦では「打者の反応を見ながら投げられました」とリーグ戦初完封を飾り、この試合まで4試合に登板し21回を投げて自責点1、防御率0.43と好成績を収めていた。

「実は、春先はヒジの状態があまり良くなくて出遅れてしまい、ぶっつけ本番のような状況でリーグ戦を迎えたのですが、それでも真っすぐを軸に緩急を上手く使えています」

 武蔵大1回戦でも初回から快調なピッチング。球速は130km台ながら「打者の特徴を頭に入れて丁寧に、要所だけ力を入れて投げました」とチェンジアップやカットボールを低めやコースに投げ分け、凡打の山を築いていく。

 武蔵大の山口亮監督が「左打者がアウトコースのボールを振らされ、外角を狙うとインコースを突かれてしまった」と振り返ったように相手打線を翻弄。結局、9回を一人で投げ切り5安打2失点の完投。打線も9回表に5点を奪う猛攻を見せ、9対2で快勝した。

 今季2勝目を挙げた村上に対し、筑波大・川村卓監督も「もともと実力がある選手なので、あとはコンディション。今日も落ち着いていましたし、打たせて取るピッチングができていました」と賛辞を贈った。

 大学では自身初となる2戦連続の完投勝利に、「スタミナには自信があります」と村上。その自負心を裏付けているのが、今治西高時代の練習量だ。

 平日は17時から23時まで、翌日には朝練もあったという。「ランメニューは必ず1時間ありましたし、ノックは精神的にプレッシャーをかけられた状況でやっていたので、精神面も鍛えられたと思います」。この猛練習が実を結び、3年春はエースとして愛媛大会で優勝を果たしている。

筑波大で科学的アプローチ


 高校に入学したころから筑波大への進学を目指していた。「自分の技術を上げていくうえで、筑波大だったら科学的なアプローチができると考えていました」。そのため、時間を有効活用して勉強時間に割いた。「電車通学だったのですが、その30分を勉強時間にあてていましたし、学校でも昼休みや授業の合間の休み時間をフルに使って予習・復習をしていました」。毎日の睡眠時間は5時間ほど。「文武両道」をテーマに、努力を重ねて筑波大に合格した。

 入学後はスポーツバイオメカニクスを研究。フォームなどの動作を確認して技術向上に生かしたり、ラプソードを使って数値を見ながら投球し、それぞれの球種への理解を深めている。しかし、ボールの回転効率をいじっていたところ、2年春にイップスを発症。「当時は自分の考えだけに頼っていました」と視野が狭くなっていたことが原因だった。

 そこで、自身の考えだけに固執せず、川村監督、トレーナーなど周囲からの助けも受け入れるようにしたところ、状態は快方に向かう。2年秋にリーグ戦デビューを果たすと、3年春にはリーグ戦初勝利。同年秋には規定投球回数にわずかに届かなかったものの防御率1.90をマークし、成績も上向いていった。

 投球フォームにも手を加えた。「昨年まではテークバックでトップをしっかりとつくらずに投げていたので腕が出てこず、制球や縦の変化球が良くありませんでした」との反省から、今年は左腕を上げるタイミングを早めてトップをつくり、投げるようにしているという。

 その成果か、「以前は真っすぐとスライダーで押していくだけでしたが、今はすべての球種を良い感覚で投げられています。投球の引き出しも増えました」と話す。お手本にしているのはDeNA東克樹。自身と比較しながら、さらに分析を深めている。

「正しい努力をする」という信念のもと、練習に励んできた村上。紆余曲折はあったものの、まさに正しい努力を積み重ねたことで、その成果がリーグ戦での白星となって花開いている。

文=大平明 写真=BBM
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