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【高校野球】慶応・清原勝児が藤嶺藤沢戦で気合の一打 「一瞬一瞬、一球一球を全力でやる」

 

サバイバルに危機感


慶応高・清原は藤嶺藤沢高との神奈川県大会準々決勝で今大会初安打[二塁打]を放った


 ボールに食らいついた。気合の一打である。写真からも並々ならぬ執念が伝わってくる。

 慶応高・清原勝児(2年)は藤嶺藤沢高との神奈川県春季大会準々決勝(4月29日)で、今大会初安打を放った。第3打席。2対0で迎えた3回裏二死走者なしから、外角低めの変化球を右前に運んだ(記録は二塁打)。この一打が口火となり、2点を追加。慶応高は毎回得点の9対2で、7回コールド勝ちした。清原は3打数1安打で、途中交代している。

 清原が燃えた理由は何か。危機感である。

 昨秋から背番号5の三塁レギュラーで、今春のセンバツ甲子園2回戦(対仙台育英高)では五番・三塁で1安打を放った。しかし、今春の県大会は背番号15。菅高との3回戦では出場機会がなく、向上高との4回戦では代打で出場して、四球を選んでいた。

 試合前ノックでは、一塁に入っている。現状、背番号3を着ける左のスラッガー・延末藍太(3年)と競争の立場にある。清原に限らず、慶応高はセンバツ後、森林貴彦監督の方針により、夏へ向けてもう一度、フラットにしてチーム内におけるサバイバルを促している。

 藤嶺藤沢高との準々決勝で五番・一塁の先発には鷹尾充千雄(2年)が入った。偵察メンバーであり、藤嶺藤沢高の先発投手が左腕と分かった時点で、右打者の清原が出場することが決まった。自身初めてのケースだったが「そこまで違和感はなかった」。それよりも、事実上のスターティングメンバーとして、グラウンドに立てる喜びのほうが大きかった。

「2試合は出られなかったので、悔しさはありました。出るときに、活躍できる準備はしているので、あとは『出たらやるだけ』の状態にしています」

 ポジションに、こだわりはない。

「出られれば、どこでもいい。しっかり、食らいついていきたいです。争っていく中で成長し続けていかないと、ファーストのレギュラーも取れないですし、自分の成長にもつながらない。この期間を自分のチャンスととらえて、成長できる時間だと思います」

 こうした熱き思いが、こん身の一打となった。

聖地を踏み締め変わった野球観


 もちろん、レギュラー確約とは言えない。準決勝(対横浜隼人高、5月5日)も、アピールの場に変わらない。

「チーム、自分としての準備も最大限にして臨みたい。今週より来週、来週よりも再来週と成長した姿を見せられるように頑張りたいです。一瞬一瞬、一球一球を全力でやる」

 NPB通算525本塁打の父・和博さんはPL学園高(大阪)で1年夏から3年夏まで5季連続で甲子園に出場した。偉大な父がプレーした聖地を踏み締め、野球観が変わった。

「周りの人、多くの人から支えられて今、野球ができていることに、あらためて気付かされた。その気持ちを忘れないで、野球をしたい」

 清原は昨年、留年により2回目の1年生を過ごした。大会登録上は「2年」だが、規定により、高校野球は今夏がラストである。最後の一球まで、燃えたぎる。背番号15には、父親譲りの気合と根性が染みついている。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
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