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【社会人野球】14年連続都市対抗出場へ…19時間後に控える大一番に笑顔はなかったJR東日本ナイン

 

9イニングを終えて勝つ野球


JR東日本はREVENGE99との都市対抗東京都一次予選2回戦を7回コールド[10対0]で勝利した


 試合終了は16時30分。19時間後には大一番が控えている。府中市民球場を引き揚げるJR東日本ナインに、笑顔はなかった。

 都市対抗東京都一次予選。JR東日本は東京LBCとの1回戦(5月3日)に7対0(7回コールド)で勝利し、REVENGE99との2回戦(同4日)も10対0(7回コールド)で突破。5日はTOKYO METSとの代表決定戦(11時30分開始予定)に臨む。ここで勝てば、東京都二次予選へと駒を進める。

 一次予選に敗者復活戦はない。つまり、負ければ敗退。重苦しい空気が、充満していた。

 REVENGE99との2回戦は、序盤2回は双方無得点。JR東日本は3回表一死三塁のピンチを背負うも、先発の3年目右腕・小谷野楽夕(日大)が落ち着いて後続2人を抑え、先制点を許さなかった。マスクをかぶる主将・渡辺和哉(専大)とのバッテリーが流れを呼び、その裏、5安打を集中し、打者1巡で4点を先制して、主導権を握った。4、5回も追加点を奪い、一方的な展開となった。

先発の大卒入社3年目のJR東日本・小谷野は先発で5回1安打無失点。最速146キロのストレートには伸びがあり、変化球の精度も抜群だった


 小谷野は5回1安打無失点。最速146キロでカーブ、スライダー、カットボールを織り交ぜ、安定感ある投球を見せた。

「クラブチームが相手で、投げづらさがありました。東京ドームの本戦、二次予選にもない、独特な緊張感。府中の球場の土はボールがスベスベになり難しいんですが、試合をつくることができて良かったです」(小谷野)

 ベンチも冷静だった。

 就任4年目の浜岡武明監督(駒大)は言う。

「(序盤の展開は)予想していたことです。先制されてもいい。追う展開になってもいい準備もしていました。結果的にコールドでしたが、接戦でも、最後に1点上回る。『9イニングを終えて勝つのが、ウチの野球』と、ずっと言ってきました」

2年連続で一次予選に


 JR東日本は都市対抗優勝1度を誇り、昨年まで13年連続で本戦に出場している。しかし、昨年は27年ぶりに一次予選からのスタートで、二次予選で第3代表をつかみ、本大会では8強に進出した。

 相当な危機意識で臨んだ2023年だったが、3月の東京都企業春季大会7位(6位までが都市対抗二次予選進出)の結果を受けて、2年連続で一次予選に回ることになった。

 スケジュール変更とも直面した。本来出場するはずだったJABA京都大会とJABA九州大会は、一次予選の日程から辞退した。両大会のいずれかで優勝すれば、秋開催の社会人日本選手権の代表権をつかめるが、これも、仕方ないこと。3度あるチャンスが1度となった4月のJABA岡山大会は、予選リーグ敗退。社会人日本選手権は予選からの出場となる。その後は、一次予選を照準にしてきた。

「力がない。そこは謙虚に、当たり前のことをしっかりやろうと、細かいところまで詰めてきました。一次予選までの期間で、ディフェンス面でのミスが軽減され『自信を持っていこう』と選手を送り出しています。そこで負けたら、監督の責任です」(浜岡監督)

あらためて求めた一体感


JR東日本の主将・渡辺は「代表決定戦で勝たないと意味がない。もう1回、這い上がる」と、二次予選進出、そして本大会14年連続出場へ、チームをけん引する


 一次予選は3日連続の3連戦。精神力が結果を左右する。

 主将・渡辺は「明日、勝たないと、何も残らないので、しっかりと勝ち切る」と引き締め、小谷野は「明日ももちろん、連投の準備をします。連続出場を途絶えさせてはいけない。頑張ります」と表情は硬いままだった。

 REVENGE99との2回戦後、浜岡監督はバスの前で選手たちを集め、19時間後に控えたチームにあらためて、一体感を求めた。

「今年のほうが、危機感があります。スキを見せたら、足をすくわれるぞ! と選手には発破をかけています。石にかじりついてでも、這い上がっていく。明日、勝てば、ようやくスタートラインに立てる。(二次予選を控えたチームが)待っているほうも嫌なのでは……」(浜岡監督)

 都市対抗14年連続出場がかかるJR東日本は、2年連続でタフなゴールデンウイークを過ごしている。負けられないスリリングな一発勝負は間違いなく、チーム力を上げる。「明日は総動員です」。浜岡監督の言葉は力強かった。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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