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【大学野球】点を与えない抜群の安定感 小宮山悟監督の往年の投球を彷彿とさせる早大・加藤孝太郎

 

丁ねいにボールを低めに


早大のエース・加藤は法大3回戦で8回無失点。安定感のある投球を披露した


 背番号「11」。早稲田大学野球部のエース番号は、チーム全員が認める信頼の証し。早大・小宮山悟監督はベンチを動かなかった。

 1勝1敗で迎えた法大3回戦(5月9日)。早大が勝てば、勝ち点3の首位・明大と並ぶ「大一番」である。

 神宮のスコアボードには、1回からゼロが並んだ。早大・加藤孝太郎(4年・下妻一高)と、法大・篠木健太郎(3年・木更津総合高)による息詰まる投手戦である。150キロ超のストレートで押す「剛」の篠木に対して、加藤は丁ねいにボールを低めに集める「柔」が武器と、対照的な右腕の投げ合いである。

 7回裏二死二、三塁、早大のチャンスで打席には九番・加藤。小宮山監督は代打を送らず、そのままエースを打席に立たせた。結果は三ゴロで、先制点を奪えなかった。

 小宮山監督はこのゲームの最長である延長12回を見据え「後ろ(救援投手)がしんどくなる」と、加藤の続投を選択。結果的に0対0の延長12回引き分けに終えた試合後、小宮山監督は言った。「勝負して代打を使っていたほうが、勝つにしても、仮に負けるにしても、9回で決着がついていたかもしれない。ウエートがそちらに(連盟規定の延長12回)……。反省しています」。双方譲らないジリジリとした展開であっただけに、自ら仕掛けるべきであったと振り返ったのだ。

 加藤は8回無失点でマウンドを降りた。

「9回まで投げさせたかったが、120球。週末(13日から)に明治戦が控えていますので、無理はさせられない」(小宮山監督)

 9回からリリーフした2番手の右腕・田和廉(2年・早実)が自己最速を3キロ更新する152キロで3回無失点、12回は左腕・齋藤正貴(4年・佐倉高)がゼロに抑え、引き分けに持ち込んだ。3投手それぞれが、持ち味を発揮した。

「投手陣に関しては、こちらの言いたいことを理解してやってくれている」と小宮山監督は評価。その象徴が、加藤である。この日、8イニングで与えた四死球は2つ。今シーズンを通しても、31回2/3で6四死球と、投手の基本であるコントロールが抜群。NPB、MLBで活躍した小宮山監督の往年のピッチングを彷彿とさせる「安心感」がある。

法大との相性は抜群


 さて、1勝1敗1分で迎える4回戦(5月10日、13時開始)。小宮山監督は「今日より大一番」と語った。法大4回戦を終えれば、中2日で天王山・明大戦を控える。今春から早稲田伝統のエース番号「11」を着ける加藤は4試合に先発して3勝(0敗)を挙げ、防御率1.14。先発に定着した昨春はリーグ2位の防御率1.67、昨秋は最優秀防御率(1.41)のタイトルを初受賞と、点を与えない投手である。

 早大・加藤は法大との相性が良い。昨春の2回戦は6回2失点、昨秋の1回戦は8回無失点、そして今春の1回戦は8回途中1失点。そして、3回戦の快投である。法大は走者を出しながらも本塁が遠く、加藤重雄監督は、「もう1本が出なかった苦しい試合」と唇をかんだ。勝負の4回戦で早大が勝ち点を奪取する上で、エースの使いどころはどこか。目先の勝利をつかむのと並行し、次カードもにらみながらの、小宮山監督の采配に注目である。

文=岡本朋祐 写真=矢野寿明
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