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1年前は「独立リーグで控え」のルーキーが新人王候補 育成入団のリードオフマンは

 

一つひとつが力強い


トップバッターとして首位を行くチームで存在感を発揮している茶野


 リーグ3連覇を目指すオリックスに不可欠なリードオフマンとなっているのが茶野篤政だ。

 育成ドラフト4位で入団と無名の存在だったが、春季キャンプ、オープン戦の活躍で3月24日に支配下昇格。背番号が「033」から、「61」に変わった。俊足を生かして外野で広い守備範囲を誇り、強肩、打撃もミート能力の高さ、選球眼の良さで評価を高めていく。3月31日の開幕・西武戦(ベルーナ)に「八番・右翼」でスタメン出場。育成ドラフトで入団し新人が開幕戦で先発出場するのは史上初の快挙だった。NPB初打席となった3回に高橋光成から三塁内野安打で出塁すると、盗塁に成功。5回の2打席目も犠打をきっちり決めた。その後の試合でも結果を出し続け、4月21日の西武戦(京セラドーム)から12試合連続安打をマーク。5月に入ってから一番に定着してチャンスメークを担っている。

 両足を大きく広げたスタンスから泥臭く球に食らいつく。ベンチでは相手投手の特徴をノートにメモする姿が。試合中に修正できる能力も大きな強みだ。4月28日のロッテ戦(京セラドーム)では、難敵・佐々木朗希に対して4回一死満塁の好機で適時内野安打。159キロの直球をきっちりはじき返した。4月14日のロッテ戦(ZOZOマリン)では佐々木朗との初対戦で3打数3三振と完ぺきに抑え込まれたが、やられっぱなしでは終わらない。2週間後の対戦で価値のある一打を放った。

「茶野の良さはスピードだけでなく、プレーの一つひとつが力強いこと。スイングが当て逃げでなくきっちり振り抜くし、肩も強い。これだけ能力の高い選手が育成ドラフト4位まで指名されなかったのが不思議なぐらいです。際どい球をファウルでカットできる技術があるので出塁率も高い。中日大島洋平を彷彿とさせます。オリックスは宇田川優希が新人王の資格を有しており、今年一軍デビューで抜群の安定感を見せている山下舜平大もいます。彼らと並んで茶野も新人王の有力候補になるでしょう」(スポーツ紙記者)

日の当たらない野球人生


 茶野はアマチュア球界で日の当たる道を歩む選手ではなかった。中京高では控え選手で、3年夏は代打で出場したのみ。名古屋商科大では1年秋からレギュラーをつかんだが、卒業時に獲得に乗り出す社会人野球の企業はなかった。独立リーグ・四国IL/徳島に入団した昨年も開幕戦は控えスタート。だが、6月15日のオリックス二軍との交流戦で本塁打を含む4安打4打点1盗塁の大活躍を見せるなど打力が向上して走塁技術も高めたことで、人生が変わっていく。59試合出場で打率.316、37盗塁をマークして首位打者を獲得。昨秋の育成ドラフトでオリックスから指名を受けた。

積極的なプレーをこれからも


 チームは正捕手の森友哉が右足部骨挫傷で10日に登録抹消されたが、茶野や山下ら若い力が躍動して首位をキープしている。実績にとらわれず、彼らの能力を引き出した中嶋聡監督の起用法は評価されるべきだろう。

 茶野は昨年11月の入団会見でプロでの抱負を聞かれ、以下のように語っている。

「ずっとテレビでプロ野球を見てきた球団に入ることができて、まだまだこれからもっと頑張っていかなければいけないなと思っています。自分が一番自信を持っている足の速さを生かした積極的なプレーで、チームの得点に常に絡んでいくようなプレーをしていきたいと思っています」

 スピード感あふれるプレースタイルで、ファンのハートを早くもつかんだ。これからも己の力を信じてサクセスストーリーを切り拓く。

写真=BBM
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