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昭和ドロップ!

長嶋茂雄監督を語ろう! 伊東キャンプの続編と定岡正二さんが不良になろうかと思った話/『昭和ドロップ!』

 

 定岡正二氏、篠塚和典氏、川口和久氏、槙原寛己氏の書籍『昭和ドロップ!』が5月2日(一部地域を除く)、ベースボール・マガジン社から発売されました。昭和に生まれ育ち、昭和、平成に輝いた4人が、巨人長嶋茂雄、青春の多摩川ライフなど、あのころのプロ野球を愛あり笑いありでたっぷり語り合う1冊です! これは不定期で、その内容の一部を掲載していく連載です。

「『そのときは仲人お願いします!』って何度言ったか!」(定岡)


『昭和ドロップ!』表紙


 再び定岡正二さん、篠塚和典さん、川口和久さんでミスターこと、長嶋茂雄さんについて語ってもらった章の一部である。

 今回のテーマは伝説の伊東キャンプ続編と定岡さんの引退だ。ちなみに『伊東会』は長嶋監督と伊東キャンプ参加選手の会。定岡さんは不参加ながらメンバーに入っていた。

定岡 シノ、伊東会って何人くらい集まったっけ?

篠塚 多いときは15人くらい集まったかな。来られない連中と、誘ってないやつもいたけど(笑)。

定岡 毎年、冬に1回、ミスターの別荘に招待していただいてね。そこは風呂に入りながら富士山が見えるんだ。ミスターが「おい、食べてるか」「おい、寒くないか」(口まね)とか、いろいろ気を使って声をかけてくれた。僕は、あの別荘で初めて床暖房を経験した。ミスターは寒がりなんで、僕らにも羽根布団と床暖房で防寒はばっちりなんだけど、正直言うと、暑くて、暑くて(笑)。でも言えないでしょ。ミスターが「おい、寒くないか」(またも口まね)って言ってきたら「大丈夫です!」以外、何を言えるの!

篠塚 ミスターに「う〜ん、定岡、お前、結婚しないのか」(やはり口まね)って、いつも言われてましたね(笑)。

定岡 また、俺に振るか! 「そのときは仲人お願いします!」って何度言ったか!

篠塚 でも、伊東キャンプで力をつけ、そのメンバーが、なんとかミスターを胴上げしたいという思いでやっていたんだけど、1980年は3位で退任になった。パッといなくなってしまって、ほんと空っぽになったような気持ちになった。

定岡 うん、ショックだったね。あのあと藤田元司さんが監督じゃなかったら、ジャイアンツはどうなっていたか分からない。

──藤田さんの話は、機会をあらためてじっくりお聞かせください。

「全部、ミスターのおかげですよ」(定岡)


定岡 でもね。僕は在任中だけじゃなく、ジャイアンツをやめるときも、ミスターにすごくお世話になっているんですよ。

川口 近鉄に行けと言われ、「嫌だ」とスネまくって引退したときですね(1985年オフ)。

定岡 グッチ、それ言うか? 近鉄に悪いから言わないようにしようと思ったのにさ!

川口 で、そのとき長嶋さんは何を。

定岡 ドジャースにいたアイク(生原昭宏)さん(当時ドジャースの会長補佐)に連絡してくれて、ドジャースのスプリングトレーニングに参加できたんだ。あれがあったから野球を嫌いにならなかったと思う。きっぱり現役と縁が切れた。

川口 指導者の勉強ですか。

定岡 肩書きは打撃投手だったかな。でも、実際、行ったら打撃投手じゃない。マイナーじゃなく、メジャークラスの選手と一緒に練習をさせてもらい、すごくよくしてもらった。1カ月、目いっぱい野球をやらせてもらったんだ。楽しかったし、野球に完全燃焼ができたね。あれがなかったら、今、野球界にいないと思うよ。あのとき俺、野球界から離れて不良になろうと思ったからね!

川口 不良というのも昭和ですね(笑)。

定岡 当時はいろいろ言われたけど、近鉄がどうこうじゃないよ。なんで俺を出すんだと思って、そっち。言い方は悪いけど、一度だけ、大好きなジャイアンツにケツをまくったんだ。だって、その年(1985年)は4勝かもしれないけど、その前の年まで、5年間で50勝近くしているのにってね(47勝)。あのときは、「もういいや、俺の野球は終わりにしよう」と思ったんだ。

──そうだったんですか。

定岡 全部、ミスターのおかげですよ。今振り返っても、すごくぜいたくな環境だったと思う。ピッチャーはバレンズエラ、ハーシュハイザーとか超一流選手がいて、彼らと一緒に一軍扱いでやっていたんですからね。それで意外と僕のスライダーが通用したんです。ゲーム形式で5イニングくらい抑えたあと、ラソーダ監督から「サダオカ、お前、アメリカに残れ」と言ってもらった。ほんとうれしかったな。

川口 さくっと自慢入れてますね(笑)。

定岡 違うよ! いい思い出だったということ。ミスターの僕へのプレゼントだったのかな。

──今回は、いい話の連発ですね。

定岡 僕らが話をつくっているわけじゃないんです。ミスターがそういう人だから、自然とそういう話になるんですよ。
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