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【社会人野球】14年連続で都市対抗出場のJR東日本 強さを継続できる理由は「スキのない練習」

 

「われわれは日本一を目指しているんだ、と」


JR東日本は14年連続の都市対抗出場を決めた


 14時45分。神宮球場へ出発する15分前、JR東日本を指揮する濱岡武明監督(駒大)は、活動拠点・柏野球場の室内練習場にメンバーを集めた。

「負けたら途切れるが、歴史の中で野球がやれている。こんなモチベーションはない。14年連続(出場)をかけた戦いを楽しんでいこう」

 都市対抗東京地区予選。JR東日本は昨年、27年ぶりの一次予選からのスタートし、二次予選で第3代表を得た。今年も厳しい現実と向き合った。3月の東京都企業春季大会7位を受け、2年連続で一次予選に回ったのだ。

 JR東日本での現役引退後、2009年から指導する山本浩司コーチ(亜大)は言う。

「昨年の二の舞にはなりたくない。新チームからキャンプ、オープン戦と過ごしてきましたが、結果的に7位という現実。大丈夫か……というムードがあったのは事実です。そこで、もう一度、確認したんです。目標はどこにあるのか、と。(都市対抗に)出ることが目的ではない。あくまでも、われわれは日本一を目指しているんだ、と」

 一次予選3試合をすべて7回コールドの無失点で勝ち上がった。二次予選は1回戦(対鷺宮製作所)、準決勝(対NTT東日本)といずれも逆転勝ちで、第1代表決定戦へ駒を進めた。山本コーチは明かす。

「21年は第3代表決定戦を延長18回で落とし、ラストの第4代表決定戦は延長10回で勝利。濱岡監督と冗談交じりで『ドラマチックな監督ですね(苦笑)』と話していました。今年は初戦から2試合を接戦、リードを許してからの勝利。投手を担当する私としましては、今年に関しては、打線に助けられた」

指揮官の考えを体現


 明治安田生命との第1代表決定戦は、2対8で敗退した。数々の修羅場を経験してきた就任4年目・濱岡監督に焦りはなかった。

「集中力が、力みにつながっている。私たちは勝ち、勝ち、負けできたから、第2代表決定戦がある。(NTT東日本の)勝ち、負け、勝ち、勝ちの第2代表決定戦ではない。まだ余裕がある。楽しく、ノビノビやろう」

 仮にここで負けても、まだ、第3代表、第4代表決定戦が残っている。先を見据えてはいけないが、そこまで、気負う必要はない。自身の持っている力を出していこう、との指揮官の考えを体現した。

2009年からJR東日本のコーチ[投手担当]として指導する山本コーチ。「14年連続」のすべてに携わってきた


 NTT東日本との第2代表決定戦(6月1日)を7対0で、14年連続代表を決めた。山本コーチは言う。

「鷺宮製作所との1回戦、NTT東日本との準決勝、そして、昨日の第1代表決定戦といずれも1回に先頭打者を出して、失点をしていました。今日は何とかこの入りを大事にしていこうと、先発の西居(建陽、中部学院大)には言いました。一番打者を三振に斬り、落ち着いて野球をすることができました」

 変則左腕・西居は本来、救援の立場である。いつもピンチでの出番であり、メンタルが強じんだ。ポイントとなった立ち上がりを三者凡退で斬った。濱岡監督の方針により、左打者6人を並べたNTT東日本打線に対してのサウスポー起用が、見事にはまった。リズムの良い投球が打線につながり、得点を重ね、試合を優位に進め、主導権を握る。西居は6回1安打無失点に抑え、7回からは守護神・西田光汰(大体大浪商高)が3イニングを締めた。

目指すは2011年以来の優勝のみ


神宮球場ではJR東日本の応援団、チアリーダー、吹奏楽団が統率のある応援を繰り広げた。駆けつけた社員もスタンドで熱狂した


 山本コーチは2010年からの「14年連続出場」を、すべて携わってきた唯一のユニフォーム組である。なぜ、強さを継続できるのか。

「スキのない練習、だと思います。19年11月まで15年指揮した堀井(哲也)監督、19年12月から率いる濱岡監督も、そのスタイルは変わりません。今日もベンチ外のメンバーが、朝からグラウンドで汗を流していました。チームのため、自分のために何ができるのかを考えている。主将・渡辺和哉(専大)が歴史を伝え、その伝統が根付いているのかなと思います。あとは(野手担当の)石川(修平、法大)コーチが斬新な指導で、若手選手をうまく引き上げているんです。入社2年目の四番・山内慧(専大)、1年目の五番・海崎雄太(法大)がその象徴。二次予選4試合で30得点の攻撃陣が、投手陣をカバーしてくれました」

 リリーバー専門の西居を先発で起用したのも、本来は主戦として期待された入社3年目右腕・小谷野楽夕(日大)の不調が誤算だったからだ。濱岡監督は「(東京ドームの)本戦までの課題は投手陣の立て直し。上位へ勝ち進むには、小谷野をもう一つ上げていかないといけない」と、エースの奮起を促した。山本コーチも「鍛えていきます」と語った。昨年の都市対抗は8強。目指すは2011年以来、優勝チームが手にできる栄光の黒獅子旗のみ。「常勝」が宿命づけられているJR東日本は、スタートラインに立ったに過ぎないのだ。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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