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阪神投手陣に新たな救世主 「山本由伸に匹敵する能力」の右腕は

 

交流戦で防御率0.00


188センチの長身から力強いボールを投げる才木


 交流戦に入り、6勝7敗と勢いが失速している阪神。踏ん張りどころで救世主となっている投手が、才木浩人だ。

 6月4日のロッテ戦(甲子園)では令和の怪物・佐々木朗希との投手戦を制し、3安打12奪三振で自身2度目の完封勝利。3連敗で迎えた11日の日本ハム戦(エスコンF)でもチームを救った。7回4安打無失点の快投で今季5勝目。新球場のマウンドの適応に試合序盤は苦しんだが、修正能力の高さを見せた。中盤以降はカーブを有効に使い緩急自在の投球に。1点リードの6回一死一、二塁のピンチでは四番・万波中正を149キロ直球で遊ゴロ併殺に切り抜けた。

 今季は5月1日に登録抹消されたが、3週間後に再昇格後は4戦試合登板で4勝0敗、防御率0.30と驚異的な安定感を誇る。今季はすべて日曜日に登板しており、18日のソフトバンク戦(甲子園)が次回登板の可能性が高い。過去の交流戦で規定投球回に到達し、防御率0.00をマークしたのは3人のみ。才木は交流戦のシーズン規定投球回数にあと2イニングで到達することから、記録達成の期待がかかる。

 189センチの長身から投げ下ろす右腕はスケールの大きさを感じさせる。150キロ以上を超える直球、スライダー、フォークを武器に三振奪取能力が高い。今季は58回2/3でリーグ4位の61奪三振。防御率1.53もチームメートの大竹耕太郎に次ぐリーグ2位の好成績だ。

望んでいたトミー・ジョン手術


 才木は2018年に6勝をマークしたが、その後は右肘痛に苦しんだ。20年は一軍登板なしに終わり、11月にトミー・ジョン手術を受け、育成選手として契約。才木は昨年8月に週刊ベースボールのインタビューで、当時をこう振り返っている。

「実はトミー・ジョン手術が決まる前日は『手術しかない』という判断を下してほしい、と願っていました。ケガをしてから手術までの1年半くらいは、治療のみで、投げるたびに痛いので、投げられないという苦しさがありました。ヒジに関していいと言われることをいろいろと試してやり続けたのですが、まったく良くならなくて……そうなると僕の中では『これはもう手術しかないやろ』という思いが強かったです。私生活にも支障が出るくらいの状態でしたので。この手術で有名な横浜の先生に診察してもらいました。『これはトミー・ジョン手術が必要ですね』と言ってもらったときに『ああ、診断してもらってよかった』と思えましたし、絶望的だったのが何か前が開けたような感覚でした。

無名高出身ながら


 昨年2月に1年半ぶりの実戦復帰を果たし、5月に支配下昇格。7月3日の中日戦(バンテリン)で5回無失点に抑え、1159日ぶりの白星を挙げたときはお立ち台で感極まって涙を流した。

 今年は真の復活に向けて期する思いは強い。才木は「98年世代」で、山本由伸(オリックス)、今井達也(西武)、藤平尚真(楽天)と同世代。才木は決してエリートではない。中学時代は野球強豪校から声がかからず、公立の須磨翔風高に進学。甲子園には届かなかったが、2年春に兵庫県大会で準決勝進出へ導くなどエースとして評価を高め、阪神にドラフト3位で入団した。

 スポーツ紙記者は、「投手としての能力は山本に匹敵すると思います。2ケタ勝利は通過点で、15勝以上を目指せる投手。次回のWBCで侍ジャパンに入る力は十分に持っている。負けず嫌いな性格で向上心も旺盛です。これからさらに進化していくでしょう」と期待を込める。

 試練を乗り越えた男は強い。「サンデー才木」は投げられる喜びを胸に、右腕を振り続ける。

写真=BBM
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