喜怒哀楽を出さないのがポリシー
明大の3年生・宗山は一つひとつのプレーに風格を感じる
侍ジャパン大学代表選考合宿(バッティングパレス相石スタジアムひらつか)が6月17日から3日間の日程で始まった。昨年、2年生で初代表入りした明大・
宗山塁(3年・広陵高)が初日から存在感を示していた。
シートノックでは自らのポジションである遊撃手で、ひと際、軽快な動きを見せた。捕球から送球まで一切、ムダな動作がなく、流れるようなプレーに目を奪われる。スタンドで視察したNPB球団幹部は「あの守備力は、今でも一軍で使える。来年のドラフトは何球団が1位で競合するか」と目を光らせた。
宗山は3年春を終え、東京六大学リーグ通算76安打。3シーズンを残し、明大の先輩・
高山俊(現
阪神)のリーグ最多131安打に挑む。攻守走三拍子そろった2024年のドラフト超目玉に、早くも周囲はヒートアップしているが、宗山は平常心を強調する。
「レベルの高いところですが、自分のいつもどおりの冷静なプレーを心掛けたい。守備、打撃ともバランスの良さを見せていきたい」
宗山はあえて、喜怒哀楽を出さないのがポリシー。心のスキを見せないスタイルにこだわるが、これには裏付けがある。誰にも負けない練習量と、実戦における豊富な経験値だ。
「練習と同じようにできるのが一番いい。(1年春から東京六大学リーグ戦で出場し)練習でできて、試合で焦ってできないことが減ってきたし、なくなってきた」
さらに、突っ込んだ話をする。宗山は打席や守備位置で、独特のオーラを醸し出す。決して意図的ではないが、全力プレーの一環でやろうとしていることではあるという。
「昔から野球選手ってカッコいいなと思って見ていました。見ていてカッコいい選手が好きなので、そういう選手を目指してきたのはあります。野球は相手があっての種目なので、そこに左右されがちですが、『自分のいつもどおり』を発揮するにはどうしたらいいのか? 自分なりの世界観があって、自分の間(ま)で野球をやる。自分のリズムを持っていないと、相手に崩されてしまう。求めていった結果がそうなっていると思います」
昨年の悔しさを晴らすために
昨年はハーレムベースボールウイーク2022(オランダ)で4位。宗山は打率.143(14打数2安打)と初の国際舞台で厳しさを味わった。タイミングを合わせづらい外国人特有の投球フォーム、手元で動くボールに苦慮した。また、混成チームで戦う難しさも学んだ。
「一つのミスが勝敗を分ける。短い期間の中で連係を高めていくことも大事。一人で勝とうとしても……。環境も異なるので、個の力よりもつないで、つないで束になって戦うことが、勝てる方法だと思います」
選考合宿は18、19日には紅白戦が行われ、19日にメンバー26人が発表される。宗山の2年連続代表入りへのアピールは続く。
文=岡本朋祐 写真=矢野寿明