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【社会人野球】あえて「実戦力」で選考しない データ重視で人選する侍ジャパン社会人代表 

 

数値の「見える化」を実践


2017年から侍ジャパン社会人代表を指揮する石井監督は桐蔭学園高、慶大、東京ガスで捕手として活躍。現役引退後は、東京ガス監督のキャリアがある


 第19回アジア競技大会(中国・杭州、9月23〜10月8日)に出場する侍ジャパン社会人代表の選考合宿が6月24日、JR東日本柏野球場で行われた。39人が参加し、最終メンバーは24人に絞り込まれる。

 3日間の日程で行われるが、練習がメイン。紅白戦を含む実戦は行われない。セレクションにおいてはゲームでのパフォーマンスを見極めるのが一般的も、確固たる事情があった。

 2017年から侍ジャパン社会人代表を率いる石井章夫監督は、その理由を明かす。

「都市対抗の前(7月14日開幕)であり、オーバーワークになっても……。春先のJABA大会、都市対抗予選と見ており、彼らの実力は十分に把握している。今回はコンディションの確認と、一つのチームとして動くのではなく、個々のレベルを高めるのが目的です」

 なぜ、あえて「実戦力」を選考しなくてもいいのか。社会人球界ではここ数年、各カテゴリーの強化合宿(ジュニア、U-23、社会人代表)で数値の「見える化」を実践してきた。各計測が行われ、石井監督によればプロスペクトリストとして約100人のデータが蓄積されているという。投手ならばボールの回転数、回転軸など、打者ならば打球速度や角度などを収集。またフィジカル面においては、各部位の可動域など、メディカルチェックが行われ、それらはすべてデータ化された。この100人から選ばれたのが、今回の39人だという。

 石井監督は常日ごろから海外の野球に目を向け、侍ジャパン社会人代表としての方向性を模索してきた。指導スタッフにも重きを置く。さまざまな数値を分析するクオリティーコントロール、心理面をケアするスポーツサイコロジスト、メンタルトレーナー、アスレチックトレーナー、専門のドクターを配置。既存のスタイルにとらわれない、新たな領域へ挑戦してきた。昨年のU-23W杯(台湾)では3大会ぶり2度目の世界一という形で成果を残し、石井監督は「さらに進化すべく、継続する」と、取り組みをアップデートしている。

打者は「打球速度」、投手は「球質」


 選考基準も明確だ。石井監督は言う。

「前回(2018年)のアジア競技大会では(優勝した)韓国の速いボール、動くボールに対してノーマークでした(日本は銀メダル)。今回は対応できる打者を選びたい。かつては『機動力』と言っていましたが、攻撃的な打線で大量得点にチャレンジしていく。投手はかわすタイプではなく、力で押すスタイル。われわれも(世界に)追いついていきたいと思います」

 打者は「打球速度」に比例される、長打力が期待できる打者、投手はスピードガン表示だけではない、回転数に実証される「球質」を追い求めていく。アジア競技大会は広島開催だった1994年を最後に金メダルから遠ざかる。ほぼオールプロの韓国、オールアマチュアで臨むと言われる台湾のライバルチーム撃破へ、最強の社会人24人を選考していく。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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