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首位陥落の阪神…「2度の育成枠を経験した苦労人」がV奪回のキーマンに

 

続いている「不敗神話」


貴重なリリーフ左腕として腕を振っている島本


 交流戦を7勝10敗1分けで終えた阪神。リーグ戦再開後も、苦しいスタートとなった。2.5ゲーム差に迫ってきた2位・DeNAに同一カード3連敗を喫し、44日ぶりに首位から陥落。敵地・横浜スタジアムで昨年6月28日から続く連敗も13に伸びた。

 投打がかみ合わない試合が続いているが、阪神のスタイルは強力な投手陣を中心に守り勝つ野球だ。だが、交流戦で守護神を務めていた湯浅京己に救援失敗が続き、登録抹消に。岩崎優を抑えに据えて救援陣の再整備を行う中、「勝利の方程式」として期待されるのが、30歳左腕の島本浩也だ。

 今年は開幕二軍スタートだったが、5月23日に一軍昇格。翌24日のヤクルト戦(神宮)で、1点ビハインドの8回にマウンドに上がると1回無失点と反撃を断ち切った。続く9回に打線が奮起して逆転。2019年8月1日の中日戦以来1392日ぶりの白星をつかんだ。6月16日のソフトバンク戦(甲子園)でも同点の5回から救援登板して2回無失点の好投で、試合の流れを引き寄せると、6回にチームが勝ち越して2勝目を挙げた。プロ野球歴代4位のデビューから通算126試合無敗と「不敗神話」が続くが、運だけで記録が続いているわけではない。

入団4年目オフに支配下へ


 島本は苦労人だ。京都の名門・福知山成美高では2年から主戦投手になったが、3年時に他の部員の不祥事で対外試合禁止処分を受け、甲子園と縁がなかった。育成ドラフト2位で阪神に入団すると、プロ4年目の14年オフに支配下昇格。15年は18試合、16年は23試合登板と頭角を現していく。17、18年は計1試合登板とファーム暮らしが大半だったが、矢野燿大前監督が就任した19年は開幕からシーズン通じて一軍に定着し、チーム最多の63試合登板。4勝0敗1セーブ11ホールド、防御率1.67の好成績で2年ぶりのCS進出の原動力に。島本は週刊ベースボールのインタビューで、活躍の要因をこう振り返っていた。

「僕の中では技術面では昨年とまったく変わっていないんです。変わったのは、チャンスをもらってより多く一軍で経験を積めたことだ、と思っています。つまり、経験値ですかね。それにより動揺しなくなった。以前は1本でも安打を打たれると、もっと打たれるんじゃないか、と不安になっていました。今では『ピンチになってからが勝負だ』と思えるようになっています」

魅力は大胆な投げっぷり


 向上心の強い左腕は「これは、あるあるの話で、1年間だけ活躍して、2年目でなかなか厳しい結果になる、というのがあります。でも僕は、今年以上に来年はいい成績を残していくぞ、という思いはすごく強いですし、ずっと毎年キャリアハイを更新していく投球を続けたいです」と誓っていたが、その後は試練に見舞われる。同年オフに左肘のクリーニング手術を受けたが、翌20年はコンディション不良で一軍登板なし。トミー・ジョン手術に踏み切り、オフに2度目の育成契約となった。21年はリハビリに専念して登板機会なし。昨年の5月に実戦復帰し、6月20日に支配下復帰。15試合登板で2ホールド、防御率2.57の成績を残した。

 島本の一番の魅力は大胆な投げっぷりだろう。フォーク、シュート、スライダーを織り交ぜて140キロ台中盤の直球で強打者の懐を臆せずに突いていく。勝負の分岐点となるピンチの場面でも左腕を思い切り振れる。25日のDeNA戦(横浜)では2点ビハインドの8回にマウンドに上がり、きっちり三者凡退に仕留めた。緊張感あふれる試合が今後も続く。修羅場をくぐり抜けてきた島本の力が必要だ。

写真=BBM
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