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2ケタ勝利未経験もFAで一番人気?「全球団が欲しい」と絶賛される左腕は

 

安定感が際立つピッチング


今季も抜群の制球力で先発マウンドを守り続けている加藤


 上位3球団を追いかける4位の日本ハム。優勝戦線に食い込むためにはこれ以上借金を増やすわけにはいかない。6月27日の西武戦(那覇)は2対1と逆転勝利で連敗を2で止め、借金4に減らした。

 チーム防御率はパ・リーグで唯一の2点台と投手陣は安定している。侍ジャパンでWBC制覇に貢献した伊藤大海、エース右腕の上沢直之、今季自己最多の6勝を挙げているサブマリン・鈴木健矢、三振奪取能力が高い大卒2年目の北山亘基と力のある投手がそろっている中、安定感が際立っているのが左腕の加藤貴之だ。

 今季はリーグ歳最多の3完投をマーク。5月13日のロッテ戦(エスコンF)では102球の省エネ投法で4安打完封勝利を飾った。直球は140キロ台中盤と速いわけではないが、剛速球がなくても抑える術を知っている。精密機械と評される抜群の制球力でカットボール、フォーク、チェンジアップ、スライダー、スローカーブ、ツーシームと多彩な変化球を投げ分ける。昨年は8勝7敗、防御率2.01をマーク。シーズン与四球はプロ野球最少記録の11で72年ぶりに更新した。

もともと優れていた投球感覚


 日本ハムで投手コーチを務めた野球評論家の荒木大輔氏は、週刊ベースボールのコラムで加藤についてこう評している。

「私は昨年(2021年)、日本ハムで一軍投手コーチを務め加藤貴之投手を指導していましたが、彼は基本的にセンスがあるんですよね。投球感覚が優れている。それは投手それぞれが本来的に備えているもので、なかなか教えられるものではありません。とはいえ、その能力を最初から完璧にマウンドで発揮できていたわけではなかったと思います」

「多くの投手がそうかもしれませんが、加藤投手も例えばどうしても抑えたい場面になると、力が入ってしまうことがありました。やはり力むとコントロールが乱れてしまいます。加藤投手はブルペンでもヒョイヒョイとテンポ良くボールを投げ込んでいきます。コントロールはビシビシ。私は打席に立って球筋を見ることがありましたが、力を入れたときの投球と普通に投げているときの投球で体感スピードはそんなに変わりませんでした。それを加藤投手に伝え、マウンドで必要以上に力を入れなくていいとアドバイスをしましたね。それは私だけでなく、ブルペン捕手なども加藤投手に話していました」

「加藤投手が実際に抑えたい場面で力を入れなくても打者を差し込んだりしてピンチを切り抜けるなど、成功体験が積み重なっていき、昨年途中から徐々に新たなピッチングが確立されていきました。昨年の与四球率も1.26と非常に素晴らしい数値を示していますからね。今年は開幕から、そういったピッチングができていることで、規定投球回をクリアした投手の最少与四球記録を樹立できたのだと思います」

1年間計算できる先発左腕


 プロ入り以来2ケタ勝利を挙げたシーズンは一度もないが、新庄剛志監督は絶大な信頼監督を寄せている。新球場・エスコンフィールド北海道で迎えた3月30日の楽天戦で、開幕投手に指名した。

 加藤は今年4月5日に国内FA権を取得。スポーツ紙記者は「肩肘で大きな故障をしたことがないし、先発ローテーションで1年間通じて計算できる。推定年俸も1億3500万円と能力の高さを考えれば格安に感じる。FA権を行使することになれば、全球団が欲しいでしょう」と評価する。

 今季も94回2/3を投げて与えた四死球は7つのみ。投げる精密機械はV奪回に向け、左腕を振り続ける。

写真=BBM
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