週刊ベースボールONLINE

HOT TOPIC

広島が優勝争いのダークホース 新井貴浩監督に「選手を責めない」と絶大な信頼が

 

交流戦を乗り切って


チームが一丸となって戦っている広島[左は田中、右は坂倉]


 広島が強い。リーグ戦再開1カード目の巨人戦で2勝1敗と勝ち越し、DeNAには同一カード3連勝。30日のヤクルト戦(神宮)も8対0と投打で圧倒し、今季初の6連勝と勢いが止まらない。貯金を今季最多の7に増やし、阪神、DeNAの2強に割って入ろうとしている。

「交流戦を9勝9敗で乗り切ったのが大きい。近年は低迷していたが、選手個々の能力は高かった。先発陣がそろっているし、課題だった救援陣も整備されてきている。十分に優勝争いに加わる力は持っていると思います」(スポーツ紙デスク)

 2016〜18年と球団史上初の3連覇を達成したが19年以降は4年連続Bクラスと低迷。苦戦の一因は交流戦だった。新型コロナウイルスの影響で中止となった20年以外、19、21、22年と3回連続最下位。昨年も交流戦前に25勝19敗と好調だったが、交流戦で5勝13敗と大失速。リーグ戦再開後も立て直せなかった。

 鬼門をどう乗り越えるか。今年もオリックスソフトバンクに2カード連続負け越しで2勝4敗と苦しいスタートだったが、3カード目の日本ハム戦で同一カード3連勝と息を吹き返した。その後も粘り強く戦い、18年以来続いていた交流戦での負け越しは4回連続でストップした。

不調の選手に対しても信頼感


 今年の広島には反発力がある。開幕4連敗を喫したがその後に5連勝。開幕カードで3連敗を喫したヤクルトにも、2週間後に本拠地・マツダ広島で3連勝ときっちりやり返した。順風満帆だったわけではない。大きな痛手は守護神・栗林良吏の不調だった。今年のWBCでは侍ジャパンに選出されたが、腰の張りで途中離脱。開幕には間に合ったが万全の状態に程遠く救援失敗を繰り返した。5月は右内転筋の筋挫傷で1カ月間離脱。6月にセットアッパーで復帰したが1勝6敗7セーブ3ホールド、防御率6.27と不安定な投球が続いている。

 だが、今年から就任した新井貴浩監督は栗林を責めない。ピンチの場面で自らマウンドに向かい、「おまえで打たれたら本望だから。思い切って腕を振ってこい」と声をかけた。栗林に限った話ではない。秋山翔吾が6月に入り打率が急降下した時も、三番で起用し続けることを明言。信頼が揺らいでいないことを強調した。

 広島を取材するスポーツ紙記者は、「苦境になった時に人間の本質が出る。新井監督は結果が出なくても動じるそぶりを見せないし、選手たちを絶対に責めない。選手たちも『新井監督を男にしよう』と結束力が固い。戦い方も粘り強いし、強いカープが戻ってきた雰囲気があります」と評する。

Bクラス予想から上方修正


 戦前の下馬評はBクラス予想が多かったが、野球評論家の見方が変化している。週刊ベースボールの「2023野球解説者やり直し順位予想」では、多くの野球解説者が広島の順位を上方修正。2位から優勝に引き上げた平野謙氏は、「広島は先発投手陣が奮闘している。経験豊富な投手も多く長いシーズンの乗り越え方を分かっている。主軸が固定できれば優勝を争うだろう」と分析。開幕前と変わらず優勝予想の達川光男氏も、「広島は投打ともに良くて、特に打線は菊池涼介が一番に入って、秋山翔吾、西川龍馬らがしぶとい。不安材料として栗林良吏の状態というところがあるけど、矢崎拓也島内颯太郎もいる。走力も数は少ないけど、試みてはいるし。バランスの良さで言ったら広島が一番じゃないかな」と高評価だ。

 29日のDeNA戦(マツダ広島)では今季初登板の野村祐輔が6回3安打無失点の快投。田中広輔が7回に左越え適時二塁打を放つなど、黄金時代の中心選手たちに復活の予感が漂う。王座奪回へ。今年は夏場も熱い戦いが続きそうだ。

写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング