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侍ジャパンで守護神も?「江川卓の直球を彷彿とさせる」日本ハムの右腕は

 

ストレートで抑え込む


移籍1年目からクローザーに定着している田中正


 打者が直球だと分かっているのに、打てない球質を投げ込める投手は数少ない。日本ハム田中正義はその一人だろう。

 ソフトバンクから移籍初年度の今季は29試合登板で2勝1敗14セーブ7ホールド、防御率2.25。守護神として合格点をつけられる内容で、投球内容も圧巻だ。交流戦最終戦となった6月19日のDeNA戦(横浜)では同点の9回にマウンドに上がると、侍ジャパンでWBC制覇に貢献した強打者・牧秀悟を外角低めの155キロ直球で空振り三振に仕留めるなど、20球オール直球で抑え込んだ。同月27日の西武戦(那覇)でも1点リードの9回に登板すると、一死二塁のピンチで通算2000安打をマークしている代打・栗山巧をすべて直球で3球三振。ドラフト1位ルーキーの蛭間拓哉も直球で追い込むと、最後は二ゴロで切り抜けた。

 他球団のコーチは田中正について、こう分析する。

「150キロ以上の直球を投げる投手は珍しくないけど、田中の場合は打者の手元でホップするような軌道で、球質が重く感じる。打者に聞くと『直球と分かっていても外角にきっちり来た球は当てることさえ難しい』と言っていたので、体感速度は相当速いと思う。現役時代の江川卓さん(元巨人)を彷彿とさせるよね。スライダー、フォークが磨かれればさらに攻略が難しくなる。まだまだ未完成の投手だからどんどん進化していくでしょう。田中を登板させないような試合展開にしないと」

見せていた才能の片りん


 昨オフに日本ハムからFA権を行使してソフトバンクに移籍した近藤健介の人的補償で、新天地へ。ドラフト1位で5球団が競合した逸材は度重なる故障の影響もあり、プロ6年間で通算0勝1敗、防御率4.25とくすぶっていたが、かつて「大学球界No.1」と形容された右腕の潜在能力は高い。創価大3年時にはユニバーシアード代表に選出され、NPB選抜との壮行試合で7者連続奪三振をマーク。剛速球がNPBの選手の中で話題を呼んだ。

 ソフトバンク在籍時も才能の片りんを見せていた。21年に救援で18試合登板。9月7日の西武戦(メットライフ)でプロ初ホールドを挙げるなど防御率2.16と存在感を示した。この時に週刊ベースボールのインタビューで将来の展望を聞かれると、以下のように語っていた。

「自分ができることに集中して、まずは今年どうやって活躍するかしか考えていないというのが正直なところ。将来のことを考える余裕はありません。今後、先発をやることになるのか、このままリリーフなのか。自分の理想を含めても分からない。ただ、先発なら千賀滉大さんのような簡単に点の取られない、『エース』という言葉がふさわしいピッチャー。リリーバーだったら、7年連続50試合以上登板を記録した森唯斗さんのような、チームに欠かせない存在を目指していく。身近にいるお2人は、本当にいいお手本です」

「お化けフォーク」の握りを伝授されて


 田中正は昨オフ、千賀の自主トレに弟子入り。沖縄・宮古島で千賀のウイニングショットである「お化けフォーク」の握り方を伝授された。ソフトバンクのエースとして活躍し、FA権を行使してメッツに移籍した右腕も田中正の才能を認めていた。日本ハムに移籍したが、活躍することが目を掛けてくれた千賀やソフトバンクの関係者への恩返しになる。リリーバーとして結果を残し続ければ、新生侍ジャパンに選出される可能性も十分にあるだろう。

 田中正の直球には大きなロマンがある。一軍のマウンドで投げられる喜びは格別だ。新庄剛志監督から助言を受けた「スマイル投法」で相手をねじ伏せる。

写真=BBM
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