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『川淵三郎 キャプテン! 日本のスポーツ界を変えた男の全仕事』

【特別対談】川淵三郎×栗山英樹 W杯とWBCが見せたシン・スポーツの力/『川淵三郎 キャプテン! 日本のスポーツ界を変えた男の全仕事』

 

「1ミリ」でつながった2つの代表に感動


『川淵三郎 キャプテン! 日本のスポーツ界を変えた男の全仕事』表紙


 Jリーグ、日本代表、日本サッカー協会会長、バスケットボールの各々において、固定概念に縛られない発想と行動力で周囲を動かし、日本のスポーツ史を変えてきた川淵三郎氏。その仕事のすべてが描かれた書籍『キャプテン! 日本のスポーツ界を変えた男の全仕事』がベースボール・マガジン社から発売された。読み応え十分の1冊の中から、本書に掲載された元WBC日本代表監督である栗山英樹氏との特別対談の一部を抜粋し、不定期でお届けしていく。

「三笘の1ミリ」と「源田の1ミリ」


川淵 コロナ禍も昨年から少し回復して、サッカーがまず、あれだけ頑張って、「スポーツの力」というエネルギーがどれほど大きいものかを改めて確認できた。次は、さぁWBCだぞ、となりましたよね。ですから、サッカーで味わったように、日本代表選手たちを、国民みんなでもう1回応援するんだ、という高揚感や楽しさを消したくなかったんですね。

栗山 川淵さんにWBCについてこうして熱く話していただけるなんて嬉しいです。

川淵 いやもう、テレビに釘付けでしたよ。僕は、代表選手たちをみんなで応援できるのも、コロナ禍を乗り越えた、とても大きな喜びだと手応えを感じました。この思いを何とかサッカーのいい流れから繋げたいと考えていました。とにかく準決勝のメキシコだけには負けないでくれと。決勝に行って、アメリカに負けても、今回はメジャー・リーガーも合流していたし、国内も素晴らしい選手たちが揃っていたんですから、何も、とがめられるものではない。とにかく決勝さえ行ってくれれば……頼む、負けてくれるなよって強く思いました。頼む、勝ってくれよ、じゃなくて、負けてくれるな! なんて、あんな切実な思いでスポーツを観たのは初めてだと思います。負けてくれるな! と祈りながら。反対に決勝はすごくリラックスして見てられたんですが、準決勝が本当にしんどかったですね。ドラマティックでね。なかなか結果が出なかった村上宗隆を栗山さんは信じて使い続けているんだから、村上を信じようとか、やっぱり選手の気持ちというか、つい熱くなってしまいすみません。

栗山 いえ、こんなにも色々な要素を考えてWBCを見て下さったんだと分かって、それに感激していました。でも日本代表という集団に関しては、僕自身本当に初めての経験でしたし、選手としても、監督としても日本代表が分からないのに、どうやって選手や、観て下さっている人に、日本を背負うんだ、プライドを持とう、などと伝えられるんだろうか、言葉だけにならないか、実はとても不安でした。

 どういうものかが分からなかった手探りの中で、森保一監督(サッカー日本代表)にお会いできて、森保さんは、選手としても監督としても、国を背負う戦いをもう長く経験している方だったので伺ってみたんです。森保さんは、国歌を聞いて、日の丸が上がっていくのを選手と一緒にグラウンドレベルで経験したらもう大丈夫、絶対に、そういう気持ちが分かりますから、と言って下さったんです。それは本当に大きな支えでしたし、実際にその感覚は分かりました。

川淵 そうでしたか。森保監督も腹が据わっていますからね。

栗山 今回、W杯からWBCの開催が近くて、我々もサッカーに、代表とは、国を背負うとは、最後まで諦めない試合とは、と、多くを教えてもらいましたし、サッカーの選手たちが、今回のWBCについて、たくさん発信してくれましたよね。そういういい流れは、川淵さんがおっしゃったように強く感じました。嬉しかったですし、大きな力になりましたね。

川淵 そうですね。サッカーが優勝はできなくても、勝てないと思われた強豪国を倒して国があれだけ沸き立ったわけですし、今度は野球が絶対頑張るんだ、サッカーに負けてたまるかという気持ちが、選手に芽生えないわけがない。W杯の熱が、今回のWBCをも勇気付けてくれたとは思いますよね。

栗山 「三笘の1ミリ」の勇気は、今回のチームにも間違いなく力になりました。メキシコ戦のチャレンジで判定を覆した源田壮亮のタッチは、ファンに「源田の1ミリ」と言われ、同じプロスポーツとして、同じ代表として、とても嬉しい反響でした。
週刊ベースボール編集部

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