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都市対抗2023

【都市対抗2023】投手ながら主将を務めたベテラン右腕 “Hondaの守護神”福島由登はチームの精神安定剤

 

大阪桐蔭で2度目の全国制覇


Hondaの守護神・福島。毎試合、厳しい場面での出番に備えて準備している[写真=矢野寿明]


 第94回都市対抗野球大会は7月14日から25日まで東京ドームで熱戦が展開される。開幕を前に、注目選手を紹介していく。

 大阪桐蔭高のエースとして、2008年夏の甲子園で17年ぶり2度目の全国制覇を遂げた福島由登(青学大)は、5月で33歳になった。

「当時の甲子園、自分たちはそこまで期待されていなかった。今の桐蔭の選手たちは、大変ですよね。勝たないといけない宿命を背負っている。後輩ながら、尊敬に値します」

 入社11年目の福島も「Hondaの守護神」として、崇められる存在である。2020年からチームを指揮する開田成幸監督(早大)は「終盤の福島まで持っていく。福島で負けたら仕方ない」と全幅の信頼を寄せる。監督に就任した際、正捕手・辻野雄大(白鴎大)も主将候補の一人だったが「辻野はもう少し、野球が落ち着いてからのほうが良い。福島には気持ちの強さがある。チームに浸透させやすい」と投手ながら、リーダーを託した背景がある。

 野球人生初の主将。当初は戸惑いながらも、自身の投球に集中することが、リーダーシップであることを理解した。Hondaは同年の都市対抗で11年ぶり3度目の優勝。福島はマウンド上でけん引。5試合中4試合で最後を締め、東京ドームで胴上げ投手に輝いた。優勝チームが手にできる黒獅子旗の「重み」はまだ、手に残っているという。

「(優勝した)甲子園はまだ、高校生であまり実感がなかったんですが、都市対抗は格別。黒獅子旗を手にしたんだ! という達成感がありました」

 今年の都市対抗南関東二次予選は苦しんだ。日本通運との第1代表決定戦。Hondaは0対2の8回表に追いついた。満を持して福島を投入も、8回裏に5失点で敗戦投手(チームは2対9で敗退)。Hondaは翌日、日本製鉄かずさマジックとの第2代表決定戦も敗退(1対3)した。あとがなくなった。

極限の状況でも保つ平常心


 中1日で迎えたテイ・エス テック第3代表決定戦。負ければ予選敗退という、崖っぷちの戦いを制した。福島は4対0の8回からリリーフし、2回無失点で7年連続37回目となる代表切符を決めた。開田監督は「最後は福島」と決めていた。「33歳。ボール自体は若いころの勢いはないかもしれないが、気持ちで投げるピッチャーなので」。絶大な信頼感だ。

「監督から『任せた!』言われれば『あとは俺が抑える!』と。失敗は引きずらない。『過去に俺で勝ってきた試合は、ナンボでもあるやないか!』と。次を抑えることを考える。チームとして先発投手が最後まで頑張ってくれるのが理想ですが、それが僕の役割なので、覚悟を持っています。相手チームから『福島、出てきた……』と見てくれたら、僕からしたらもう、勝ち!! 言葉は悪いかもしれませんが、ある意味でバカにならないと、あのマウンドに立つことはできないんです」

 極限の状況でも、平常心を保つ。慌てた素振りを見せるわけにはいかない。背番号18を着ける福島は、Hondaの伝統を背負っている。

「ベテランはチームが苦しいときに、結果を残すのが役目。西郷(西郷泰之)さん、多幡(多幡雄一)さん、佐伯(佐伯亮)さんの背中を見てきました。先輩たちはゲームで結果を出すんです」

「チームが苦しい場面で結果を残す」


 福島は2年間のキャプテンの大役を終え、昨年から辻野にバトンを託した。今季は主将経験のある井上彰吾(日大)とともに、福島も副将としてチームを支えている。8年目の辻野は「今後のHondaを考えたら、ベテランばかりに頼ってはいられない」と、強い自覚を持っており、世代交代がうまく進んでいる。福島は言う。

「もう1回、日本一になるのが目標。個人としては、チームが苦しい場面で結果を残す」

 福島がベンチ、ブルペンにいるだけで「精神安定剤」になる。実績が作り上げたオーラだ。

 Hondaは来年から日本野球連盟(JABA)の東京都連盟の所属になるため、南関東地区代表(埼玉県寄居町、小川町)としての都市対抗は今大会が最後。今年は会社創立75周年の節目でもあり、特別な大会になる。Hondaは1回戦(7月15日)で昨年の社会人日本選手権の優勝チーム・トヨタ自動車と対戦する。

文=岡本朋祐
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