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都市対抗2023

【都市対抗2023】「フルで5試合を投げ切る」 自らが思う“レジェンド”への道を歩むHonda熊本・片山雄貴

 

根柢にある「熊本」への愛着


Honda熊本の大黒柱・片山。都市対抗では先発、救援で全5試合、フル回転の構えでいる[写真=湯浅芳昭]


 第94回都市対抗野球大会は7月14日から25日まで東京ドームで熱戦が展開される。開幕を前に、注目選手を紹介していく。

 Honda熊本を指揮する渡辺正健監督(明大)は2008年から13年まで率い、20年に復帰。同年の都市対抗で準々決勝進出、21年は準優勝、22年は社会人日本選手権の出場をかけたJABA大会の2大会(岡山、北海道)で優勝を遂げた。近年、メキメキと力をつけており、今年の都市対抗は8年連続17回目の出場。九州地区二次予選では6年連続の第1代表と、悲願の初優勝へ機は熟したと言える。

 2期目の就任以来、渡辺監督は常勝チームを構築させるため「投打の中心をつくりたい」とテーマを掲げてきた。投手の柱は入社8年目の片山雄貴(駒大)、打線の軸は入社以来3年、公式戦、オープン戦を通じて不動の四番・古寺宏輝(関東学院大)。古寺は昨年までの2大会7試合で5本塁打と、圧倒的な長打力を見せている。一方、片山は精神的支柱だ。

 昨年は社会人年間表彰における最多勝利投手賞(6勝)を初受賞。何がすごいのかと言えば先発、ロングリリーフ、守護神と、ベンチが求めるすべての役割をこなし、結果を残すタフネスぶりだ。「自分ダメなら、チームは負ける。きついですけど、やりがいは十分にある」。片山は厳しい立場も、喜んで受け入れてきた。根底には「熊本」への愛着がある。

 駒大から16年にHonda鈴鹿へ入社。しかし、2シーズン、思い描く結果を残すことができなかった。18年にHonda熊本へ転籍。生まれ育った九州(福岡県出身)で、素材を開花させた。8強へ進出した20年の都市対抗は全3試合で救援。準優勝の21年の都市対抗では全5試合に登板した。1回戦から準々決勝まで3試合は最後を締めると、セガサミーとの準決勝では1失点完投勝利。東京ガスとの決勝も六番手でリリーフして、まさしくフル回転で、敢闘賞にあたる久慈賞を受賞した。

 鈴鹿から熊本への転籍に関係したのが当時、Honda鈴鹿の監督だった甲元訓氏(2019年からHonda、Honda鈴鹿、Honda熊本の硬式野球部統括GM)である。「良い素材ではあったが、チーム状況的になかなか登板機会がめぐってこなかった。環境を変えれば必ず、チャンスはある」と、送り出した背景がある。ここ数年の活躍は、心の底からうれしいという。

チームのすべてを背負う覚悟


 甲元氏は侍ジャパン社会人代表の投手コーチも歴任し、昨年10月のU-23W杯では3大会ぶり2度目の世界一に尽力した。今年の同代表は9月に中国・杭州で開催されるアジア競技大会に出場する。同大会のメンバー24人を選出する社会人日本代表候補合宿(JR東日本柏野球場)が6月24日から3日間、行われた。片山は同合宿に初参加。期間中、甲元コーチは片山に対して「佐竹になれ!」と言った。

「佐竹」とはトヨタ自動車の右腕・佐竹功年(早大)だ。2006年に入社してから、今年で18年目のシーズンを戦っている。都市対抗1度、社会人日本選手権6度の優勝に貢献し、日本代表キャリアは7回。14、16年にはベストナイン、最多勝、最優秀防御率に輝くなど個人賞も多数、受賞してきた。今年10月で40歳を迎える「社会人球界のレジェンド」である。6月には社会人日本代表候補合宿に招集されるなど、まだまだベテラン健在である。片山は同合宿で初めて、佐竹と接した。

「神様。レジェンド。立ち投げを見させていただきましたが『39歳でこのボールか!!』と思わず、圧倒された。生で見るのは初めて。各自に任されていたウォーミングアップを見ていても、ルーティンと言いますか、自分のやることがすべて決まっている。取り組む姿に『すごいな〜』と。凝視していました」

 片山にとって、あこがれの存在だが「佐竹になる」のとは、別の考えを持っている。

「佐竹さんのことは、誰もが知っている。通ってきたさまざまな道があるかと思いますが、自分は同じルートを歩むことはできません。『片山雄貴』という、自分だけの道を構築していきたい。(年間タイトルの)ベストナイン、最多勝利投手賞、最優秀防御率賞を独占するぐらいの心構えでないとダメです。今回の都市対抗は、日本一の座を手にした上で、橋戸賞を目指す。フルで5試合を投げ切ります」

 2020年には150キロの大台を突破。変化球はカーブ、スライダー、カットボール、ツーシーム、フォークと多彩で、すべての球種が勝負球として使える。コンパクトな腕の振りから、キレのあるボールを投げ込む29歳は、チームのすべてを背負う覚悟だ。Honda熊本は1回戦(7月15日)で西濃運輸と対戦する。

文=岡本朋祐
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