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都市対抗2023

【都市対抗2023】新人ながら四番に座り本大会で2本塁打 予選で不振に陥った東海理化・門叶直己を救った意外な人物

 

見せつけた持ち前のパワー


東海理化・門叶は瀬戸内高、上武大を経て入社1年目の外野手だ[写真=BBM]


 第94回都市対抗野球大会は東京ドームで熱戦が展開されている。7月25日の決勝まで、栄光の黒獅子旗をかけた戦いをリポートする。

 10日目(7月23日)の第1試合には、1959年の創部以来、都市対抗初白星を挙げ、ベスト8まで勝ち上がった東海理化(豊川市)が登場。準々決勝でJR東日本(東京都)と対戦した。

 1点を追う4回表、ライトへ一時逆転となる2ランを放ったのがルーキーながら四番を務める門叶直己(上武大)だ。今大会2本目で「1本目より手応えが良く、打った瞬間に行ったと思いました」と逆方向ながら飛距離は124メートルと持ち前のパワーを見せつけた。

 山根直輝監督(上武大)は「春先のJABA大会ではホームランも放つなど、そこそこの成績を収めてくれましたが、都市対抗予選がまったくダメだったんです。でも、その苦しいところでしっかりと自分と向き合った結果を、この本大会で出すことができた。これも成長だと思います」と目を細めた。

 山根監督の言葉のとおり、4月のJABA日立大会では2本塁打を記録するなど圧巻の社会人デビュー。しかし、好調は長く続かなかった。

「上武大のころからオープン戦では社会人のチームと対戦していたので、シーズンが始まったころは違和感なくプレーできていました。でも、自分のデータを取られて研究されるようになり、社会人特有のカットボールやツーシームといった動くボールになかなか対応できなかったんです」

 都市対抗の東海地区二次予選は打率.179と低迷。「結果を気にして小さなスイングになっていました」と悩める門叶を救ったのは意外な人物だった。

「補強選手としてチームに合流したHonda鈴鹿の畔上翔(法大)さんから『結果を気にするのではなく、練習の内容を気にしろ』と言われました。そして、緩いボールを打つ練習をするようにアドバイスをしていただいたのですが、このやり方が自分に合っていました」

苦しい状況で打てる四番に


 都市対抗大会特有の補強選手制度がもたらした幸運な出会いもあって、本戦を直前にして復調。日本製鉄かずさマジック(君津市)との1回戦では5回裏にレフトへ2ランを放つなど2安打の活躍を見せ、JR四国(高松市)との2回戦はノーヒットながらも2つの四球を選び、1得点と勝利に貢献した。

 4強進出をかけたJR東日本との準々決勝では中盤に逆転を許すと、そのまま押し切られ2対4。門叶も本塁打の後は四球と空振り三振に終わった。無念の敗退となったが、ルーキーの活躍が色褪せることはない。チームの都市対抗初勝利の立役者となり「1年目でこんな経験できるなんて、なかなかないこと。四番として結果を残せて良かった」と振り返った。

 今後に向けては「四番としてチームが苦しい状況のなかでも打たないといけないですし、勝負どころで一本打てる選手になりたいです」と抱負を語った。準決勝進出はならず、東京ドームを去ることになった東海理化だが、記憶に残る2023年夏の3試合だった。

取材・文=大平明
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