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広島が下馬評覆す首位争い 「カープは家族」の新井貴浩監督に黄金時代再来の予感が

 

主力が抜けてもしぶとく


現在8連勝中の新井監督率いる広島


 広島が強い。7月25日のヤクルト戦(マツダ広島)で逆転勝利を飾り8連勝。貯金を今季最多の12に伸ばし、首位・阪神を0ゲーム差で追走する。

 今の広島は主力選手が抜けても、しぶとく白星を積み重ねるたくましさがある。実際にシーズン前に思い描いていた戦力構想で誤算が相次いだ。絶対的守護神として信頼を置いていた栗林良吏が春先から救援失敗が続き、5月1日に登録抹消。開幕から「四番・一塁」でスタメン起用していたライアン・マクブルームも54試合出場で打率.215、5本塁打、27打点と調子が上がらずに6月11日にファームに降格した。さらに、中軸で打線を牽引していた西川龍馬も右脇腹肉離れで今月12日に戦線離脱した。

 守護神、四番、攻守の中心選手が抜ければチーム力低下は避けられないが、チーム一丸となって乗り越えている。栗林に代わって新守護神に抜擢された矢崎拓也は33試合登板で4勝0敗19セーブ3ホールド、防御率1.72の大活躍。栗林も6月にセットアッパーで復帰し、登板を重ねることで本来の状態を取り戻している。今月23日の中日戦(マツダ広島)で2点リードの9回に登板し、4月22日のDeNA戦(マツダ広島)以来3カ月ぶりとなる8セーブ目を挙げた。矢崎の蓄積疲労を考慮して登板したが、栗林も9回を締めくくってきた経験値がある。ダブルストッパーとして十分に機能するだろう。

「サプライズ起用」が機能


7月16日のDeNA戦では自身初の四番で起用された菊池


 マクブルーム、西川が抜けた打線は「サプライズ起用」で選手たちを驚かせた。チャンスメーカーの菊池涼介をプロ12年目で初の四番で起用。16日のDeNA戦(横浜)で2回に先頭打者で左中間二塁打を放ち、先制点の起点となるなど猛打賞の活躍で勝利に貢献した。さらに、小兵の上本崇司も22日の中日戦(マツダ広島)で四番に抜擢。マツダ広島がどよめく起用法が、ズバリ的中する。盗塁を決めるなどマルチ安打と「つなぎの四番」で光り輝いた。

 スポーツ紙記者は、「新井監督の下で各選手が自分のやるべき役割を全うしている。近年はBクラスに低迷していたので自信を失っていた部分もあると思います。今は成功体験を積み重ねることで選手たちに迷いがなくなっている。戦前の下馬評は低かったですが、昨年までとはまったく別のチームです。サプライズ起用にも根拠があるし、攻守にスキがない広島らしい野球を突き詰めている。首位争いを繰り広げているのは勢いではなく、地に足ついた実力だと思います」と分析する。

熾烈なレギュラー争い


 失敗しても取り返せる環境がある。遊撃のレギュラーの最有力候補と目されていた小園海斗は開幕から結果を残せず、打率.053、0本塁打で4月21日に登録抹消されたが、今月4日に一軍に復帰。新井監督は即スタメンで起用し続けている。12日の巨人戦(東京ドーム)で0対0の5回にフォスター・グリフィンから右翼に先制2ランを放ち、この一撃が決勝打に。守備でも再三の好プレーでもり立てている。17日のDeNA戦(横浜)では、1点リードの8回一死一塁で代打・楠本泰史の三遊間に抜けようかというライナー性の打球をダイビングキャッチし、素早く二塁へ送球して封殺。ピンチを未然に防いだ。小園が不在の間は上本、田中広輔矢野雅哉、韮澤雅也が遊撃を守った。熾烈なレギュラー争いがチーム力を高めている。

 新井監督は昨年の秋季キャンプ合流初日に選手たちを集め、「おまえたちが思っているよりオレはおまえたちみんなに期待しているから」、「オレは好き嫌いで起用とか絶対しない」、「カープという大きな家の中におまえたちがいるから。家族同然だと思っているから」と熱弁した。その信念はブレず、起用法にも表れている。勝利に誰よりも強く執着すると共に、1人でも多くの選手にチャンスを与えているからチーム全体のモチベーションが高い。

 新井監督の下で、黄金時代再来なるか。

写真=BBM
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