25回で3失点、防御率1.08
トヨタ自動車・嘉陽は松山聖陵高、亜大を経て入社6年目。先発で3勝[2完投]を挙げた嘉陽がMVPに当たる橋戸賞を受賞した[写真=BBM]
第94回都市対抗野球大会は7月25日に決勝が行われた。トヨタ自動車(豊田市)が4対2でヤマハ(浜松市)を下して7年ぶり2度目の優勝。黒獅子旗を手にし、昨秋の社会人日本選手権に続く全国大会連覇となった。
最優秀選手(MVP)にあたる橋戸賞を受賞したのはトヨタ自動車の右腕エース・
嘉陽宗一郎(亜大)だ。今大会は3試合に先発。Hondaとの1回戦、日本通運との準々決勝ではいずれも1失点完投、ヤマハとの決勝では7回1失点で3勝。25回で3失点、防御率1.08と、文句なしの受賞となった。
「チームのために腕を振っていたら(橋戸賞)がついてきました」
最速150キロを超えるストレートはキレがあり、変化球も多彩。被安打12、与四死球3個と相手打線にツケ入るスキを与えなかった。
日本通運(さいたま市)との準々決勝では6回までパーフェクトピッチングを見せ、藤原航平監督(中大)も「今大会の嘉陽は先発ですが守護神のように感じました」と振り返るほどだった。特筆すべき長所はその安定感で、本人はその秘訣についてこう語る。
「入社して3年目くらいからコントロールをずっと、課題にしていました。今はストライクを取るのに困らなくなったのですが、一番の理由はフォームが安定したから。自分は左腕しか意識していないのですが、早く引くと肩が開いてしまうので投げる方向へ向けてあげる。考えすぎると良くないのでシンプルにやっています」
冬場は投げる体力を付けることをテーマにしてきたという。
「ブルペンで100球以上を投げ込み、その次の日も50球くらい投げることで1試合を投げ切る体力だったり、連投できる体力をつけてきました」
都市対抗東海地区二次予選。東邦ガスとの初戦では160球を投げて完投勝利と、冬の練習の成果は確実に生きていた。ヤマハとの大一番はさすがに「疲れがあったので、試合前から『行けるところまで』という予定でした」と7回を投げ終えたところで交代したものの、4安打1失点。先発としての役割を果たし、チームの日本一に貢献。そして、「このチームで優勝できてよかったです」と笑顔を見せた。
昨秋の日本選手権でもMVP
嘉陽は4大会ぶり6度目の優勝を遂げた昨秋の日本選手権でも最高殊勲選手賞(MVP)を獲得している。
「やっぱり、都市対抗が社会人野球の最高峰なので、最高の気持ちです」
戦いはまだ続くが「今日で切り替えて、秋は日本選手権の連覇。来年は都市対抗で連覇するために、やることをやって準備していきたい」と抱負を語った。まさに現時点での社会人最強ピッチャーと言える嘉陽の右腕は、これからもうなりをあげることになりそうだ。
取材・文=大平明