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【大学野球】亜大の新体制が発足 新たな風を吹かせそうな予感

 

学生に寄り添うコミュニケーション力


8月1日に就任した亜大・鈴木監督[左]と山下コーチ[右]


 亜大野球部は8月1日、新体制が発足した。今春まで率いた生田勉監督が体調不良により、6月14日付で退任。後任として、同校OBの鈴木一央監督(48歳)と山下達也コーチ(29歳)が就任した。9月2日に開幕する秋のリーグ戦に向けて、テスト期間後の同4日から全体練習が本格的にスタートする。

 亜大によれば、後任人事は外部、内部と慎重に進められた。年度末ではない、秋就任のタイミングにおいて、外部からの招へいは難航。そこで、大学内で勤務する野球部OB2人に白羽の矢が立った。鈴木監督に大学から「内示」があったのは7月に入ってからだという。

「体育会の一つである硬式野球部の課外活動が円滑に進むため、(就任して現場が)整うのであれば、喜んでやらせていただきます、と」

 鈴木監督は日大三島高で四番・捕手としてプレーし、亜大では4年時から学生コーチを務めた。主将・飯塚智広(元NTT東日本監督)、二塁手・井端弘和(元中日ほか)らと同級生で、4年時の全日本大学選手権で準優勝を遂げた。

 大学卒業後は民間企業2社に勤務し、2017年から亜細亜学園に入職した。女子陸上競技部(副部長)の立ち上げに尽力し、学生部キャリアセンター(課長補佐)に籍を置く。監督就任後は日の出キャンパス内の合宿所で、学生とともに寝食をともにするという。

「一人ひとりと対話を始めています。100人以上の部員がおり、育ってきた環境も異なり、それぞれの考え方がある。彼らの気持ちをうまく引き出しながら、一枚岩になるようなチームにしていきたいと思います。学生の協力なくして、チームづくりはできません」

 学生部キャリアセンターでは就職活動を支援する立場にあり、学生に寄り添うコミュニケーション力に長けている。常日頃からキャンパス内では野球部員と接点があり、また、OB会(青々倶楽部)の事務局長も10年以上歴任。かねてから野球部とは近い関係性にあり、部員たちと馴染むのも時間はかからない。

「ユニフォームを着るのは、大学卒業以来25年ぶり」と語るが、今春まで15年にわたり、東都大学野球連盟の審判員を務めてきた。主に一部・二部リーグでジャッジ。第一線で野球を見てきており「各大学さんの性格も知っています」と、目が肥えているのは強みだ。

「多くの先輩方が築いた伝統を継承しながら、私なりの野球部の体質をつくれたら、と考えています。アドバイス、ヒントを与えながらも、一歩を踏み出すのは本人次第です。社会へ出る準備期間として『自創型』、思考が豊かな学生を育成していきたいと思います」

「戦国・東都」の厳しさを熟知


 鈴木監督を支えるのは、山下達也コーチだ。

「青天の霹靂。学生のためにできることは、全力でサポートしたい」と語る29歳は、学生の近くで、兄貴分的な存在として期待される。

 浪速高(大阪)では三塁手。亜大では選手としてベンチ入りすることはできなかったが、スコアラーとしてメンバーをサポート。相手校を分析するデータ班として能力を発揮し、在学中、8シーズンのうちリーグ優勝6度と、亜大の「頭脳」として大きく貢献した。

 大学卒業と同時に、亜大に勤務。配属先のスポーツ振興センターでは今年3月末まで、鈴木監督が直属の上司だった。週3回は硬式野球部に活動拠点である、日の出キャンパスの施設管理に当たっていた。OB会でも鈴木事務局長の下、山下氏は事務局として8年、先輩・後輩のために汗を流してきた。大学職員2人がタッグを組むわけだが、旧知の仲で、新体制への移行もスムーズに進みそうだ。山下氏も今春まで同連盟の審判員を歴任しており、「戦国・東都」の厳しさを熟知している。

 今春は3位。秋の目標を聞くと、鈴木監督は「やるからには、リーグ優勝」と語った。一部二部入れ替え戦がある東都において「まずは、一部残留」と段階を踏む監督が多い中で、新指揮官の方針は稀有だ。「最初から『入れ替え戦回避』だと、選手は萎縮してしまう。ただ、甘くないことは百も承知。戦いながら、指示していきたい」。学生が存分に力が発揮できるよう、アプローチには気を使っていく。

 鈴木監督は大学時代に学生コーチ、山下コーチはスコアラー。人のために動く喜びを知るだけに、すべての言動に思いやりがある。この秋、新たな風を吹かせそうな予感がする。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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