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【大学野球】新監督も譲らない亜大のモットー「全力疾走」 一方、学生に委ねられた「髪型」の最終回答はどうなるのか…

 

指導者不在の約1カ月半


亜大の学生コーチ・正高は3年生ながら試合前のシートノック、攻撃中の三塁コーチを任されている


 大学野球において主務と学生コーチは、部運営における組織の中枢だ。亜大は生田勉監督の退任を発表した6月14日以降、学生主体で動いてきた。鈴木一央新監督が8月1日に就任。ようやく新体制が動き出した。指導者不在の約1カ月半を、正高奏太学生コーチ(3年・狭山ヶ丘高)は「大変でした」と振り返る。日の出寮を管理する西村龍太郎(4年・天理高)と連携を取り、野球部を守ってきたのだ。

 正高学生コーチは年明け、生田前監督から同ポストの打診を受けた。「任されるのはうれしいこと。意気に感じました」と、選手の道をあきらめ、裏方に転じた。狭山ヶ丘高時代は主将を務めた。3年夏はコロナ禍で甲子園出場をかけた埼玉大会が中止。埼玉県高野連主催の独自大会で優勝した。抜群のリーダーシップは、大学では別の分野で発揮されている。

「自分で考えられる選手は、この期間で伸びたと思います。一方で、学生の自主運営ですから、流される選手が一部でいたのも事実。新たなスタッフ体制となり、開幕まで1カ月という中で、一つにしていきたいと思います」

 鈴木監督が就任する前日、正高学生コーチは「気合を入れました」と、髪の毛を剃り上げた。亜大はキャンプ前、リーグ戦前に全員が意思統一するため、丸刈りにする習わしがある。西村主務もきれいに剃り上げていた。そこには、相当な覚悟を感じた。

 鈴木監督は「今後、どうするかは学生に問いかけています。部員間で議論してもらい、結論を持ってきてほしいと言っています。私から『こうしろ』と指示することはないです」と、野球部員に一任している。

 正高学生コーチは「個人的な意見」と前提とした上で、こう答えた。

「先輩からつないできたもの。『今の時代、普通のスタイルで』というのも十分に理解できますが、丸刈り頭を含めて、亜細亜の強みだと思っています。これからの後輩にも、この伝統を残していきたい。意見は分かれると思います。タテジマのユニフォームに(長髪は)合わないと、自分はそう見ています」

 亜大のモットーは「全力疾走」である。鈴木監督は「ここは変えない。ウチのシンボルであり、ポリシー。意義があるので」と、絶対に譲らない領域だという。

「練習から塁間の一本のダッシュも手を抜かずにやる。習慣は、神宮で出る。100回に1回、1000回に1回のプレーかもしれませんが、『その1回をつかまえるぞ』と。次に勢いづける意味でも、攻守交代などの全力疾走は徹底していきます。怒られるからやるのではなく、意味を理解した上で実践させます」

 果たして、学生に委ねられた「髪型」の最終回答はどうなるのか。シキタリを守るのか、それとも新たなステージへと向かうのか。亜大はターニングポイントを迎えている。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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