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【大学野球】広陵3年夏の「1敗」を教訓としている鹿屋体育大・川瀬虎太朗 後輩の甲子園での活躍を期待

 

多くの人の尽力で大学でもプレー


広陵高OBの鹿屋体育大・川瀬は後輩たちの活躍を期待している


 甲子園出場をかけた夏の地方大会は、負ければ終わりのトーナメント。代表校以外の出場チームには、一つの黒星がつく。

 鹿屋体育大・川瀬虎太朗(1年・広陵高)は3年夏の「1敗」を、教訓としている。

 昨夏、広陵高は英数学館高との広島大会3回戦で敗退(1対2)。同春のセンバツ出場校のあまりにも、早すぎる結末だった。主将を務めていた川瀬は試合後を振り返る。

「控え選手の顔、中井先生の顔。よく覚えています。1回から9回までの光景も鮮明に残っている。悔しくて、悔しくて……。何日間かは、立ち直れなかったです」

 中井監督は主将への注文が多いことで知られる。野球部は3学年で150人以上の大所帯で、全員が寮生活を送る。メンバー、控え選手と分け隔てなく「一人一役全員主役」をモットーに掲げる集団を率いるキャプテンは、極めて重要なポジションなのである。

 過去には秋の新チームから翌年の夏まで、複数回の主将交代というのも珍しくない。関係者によれば、川瀬は1年間、代わらずに貫き通した3人目のチームリーダーだという。

 時間が経過しても、昨夏の無念は晴れない。広陵高の主将経験者としての責任を胸に過ごしてきた。家庭の事情で、野球は高校で現役生活を終えるつもりだったが……。

「ああいう負け方でしたし、あきらめられなかった」

 中井監督は川瀬がプレー続行できる環境を探し、全国で唯一の国立の体育大学である鹿屋体育大を勧めた。川瀬は「総合型選抜入試」(自己推薦)で合格。80人近い野球部員で同入試を経ての入学者は、川瀬だけだという。同入試を志願する上での基準を満たす競技実績はあったが、多くの人の尽力により、現役続行の道が拓けたのだ。人を動かしたのも、川瀬の真摯な人間性にほかならない。

「関東の強豪大学には、負けたくない」


 1年春から二塁のレギュラー。初出場した全日本大学選手権では、8強進出に貢献した。近大との2回戦ではランニング本塁打。広陵高の主将として2年秋の明治神宮大会で準優勝を遂げた神宮で、再び躍動したのだった。

 専用グラウンド、トレーニングルーム、そして、投手は回転数など、野手は打球速度など各種測定ができる「スポーツパフォーマンス研究センター」と、恵まれた環境。体育学部の学生として「野球」の授業を履修するなど、学業との文武両道の生活を送っている。

「負けず嫌い。関東の強豪大学には、負けたくない。チームの勝利に貢献した上で自分をアピールし、日本一を取りたい。そして、大学日本代表、プロを目指していきたいです」

 広陵高から明大へ進み、1年春に東京六大学リーグ戦で初本塁打を放った同期生・内海優太をライバル視している。

 この夏の広島大会、川瀬は広陵高の戦いを気にしてきた。広島商高との決勝を制して甲子園出場を決めた。一切のスキを見せない野球を展開した。「後輩たちからは、昨年の負けを糧に頑張った、という発言も聞かれました。本当にうれしかった」。川瀬はすぐに中井監督に祝福の連絡をした。「お前らの分をかえせて良かった、と。大学選手権の結果も喜んでくれ、ありがたかったです」。

 8月11日には立正大淞南高(島根)との甲子園初戦を迎える。川瀬はスケジュールの調整をつけて、後輩の応援に駆けつけるつもりだ。

「広陵は夏の優勝がない(春のセンバツは3度優勝)ので、ぜひとも、達成してほしいと思います」

 広陵高は卒業以降も、中井監督と歴代部員は家族のような絆で結ばれている。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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