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オリックス左腕がFA争奪戦か 「Cランクで投打の二刀流」にセ・リーグ球団が熱視線

 

多彩な変化球で築く凡打の山


初の2ケタ勝利も視界に入ってきている山崎福


 リーグ3連覇に向け、首位をひた走るオリックス。原動力となっているのが強力投手陣だ。先発陣は絶対的エース・山本由伸と左腕の宮城大弥の2本柱に加え、高卒3年目右腕の山下舜平大が9勝3敗、防御率1.73と大活躍。先発ローテーションの中で、この左腕の存在も大きい。今季8勝3敗、防御率3.60で自身初の2ケタ勝利が見えてきた山崎福也だ。

 昨年は先発、救援でフル稼働。24試合登板で114回2/3を投げて5勝8敗2ホールド、防御率3.45でリーグ連覇に貢献した。ヤクルトと対戦した日本シリーズでは2戦目に先発して4回無失点の快投。打撃でも3回に先制適時打を放った。中5日で先発登板した第6戦も5回無失点の好投で26年ぶりの日本一に貢献し、優秀選手に選出された。

 スライダー、チェンジアップ、フォーク、カットボール、カーブと多彩な変化球を操り、凡打の山を築く。今季は5月27日の西武戦(ベルーナ)から自身初の7連勝。テンポ良い投球で大崩れしないため、打線の援護を受けて白星を積み重ねた。山崎福の魅力は本職の投球だけではない。センスあふれる打撃も必見だ。

卓越したミート能力


今季も交流戦で高いバッティングセンスを見せた


 日大三高では3年春の甲子園に出場し、五番打者でセンバツ最多タイ記録の13安打を放ち、投手でも決勝までの全5試合に先発登板する「二刀流」で準優勝に導いた。卓越したミート能力は当時からプロの評価は高かった。

 パ・リーグは指名打者制のため、打席に立つ機会がない。普段は打撃練習することがないが、そのセンスはさびついていない。今季も6月16日のヤクルト戦(神宮)で、2回二死一、二塁の好機に左腕・ピーターズの外角のスライダーを中前に運ぶ先制の適時打。7回の打席でも今野龍太から左前に鮮やかな流し打ちで自身初のマルチ安打を記録した。本職の投球でも7回4安打1失点の好投。二刀流の大活躍で快勝した。

先輩左腕からのメッセージ


 リーグ3連覇、2年連続日本一に向けて頼もしい存在だが、オフの去就も注目されることになりそうだ。今季中に国内FA権を取得予定で、推定年俸6000万円は人的補償のないCランクとなる。

 スポーツ紙記者は、「好不調が激しい投手でしたが、今年は安定感が増している。野手顔負けの打力でセ・リーグなら投打の二刀流で活躍できる環境がある。先発も救援もできて、起用法が幅広い。獲得球団は人的補償がないことも大きな魅力です。FA権を行使すれば、パ・リーグの球団を含めて争奪戦の可能性は十分に考えられる」と分析する。

 オリックスOBで野球評論家の能見篤史氏は6月に刊行された初の自著『#みんな大好き能見さんの美学』(ベースボール・マガジン社刊)で、山崎福について以下のメッセージを記している。

「彼は僕と似ているのかもしれません。負けが先行して貯金をつくれないところも。僕の場合、ゲーム終盤で追いつかれたり、逆転されたり、ロースコアの試合で終盤の失点が多かったのですが、福也もその傾向があります。終盤の勝負どころ、そこを抑えるか抑えないかが大事な場面で、僕はギアを上げることに専念していました。自分の中でリミッターを外し、腕をしっかり振ってトップギアで投げる。そして、痛打を食らう……。『高さだけ間違えないようにしよう』。その意識が希薄だったのです。本当は力を入れることよりも、ボールの高さが重要だったのに」

「福也も同じことをしていました。ギアを上げて、上げて……まるでわが身を見るようです。だから口酸っぱく言いました。『腕をしっかり振るのはいいけど、高さを頑張れ。もう一歩、考えよう』。成果はこれから。意識や考え方を変えて自分に自信を持てれば、勝ち負けの数は逆転するはずです」

 能見氏の言葉が響いているのか、今年は勝負どころで踏ん張る姿が目立つ。能力の高さを考えれば、プロ8年間で2ケタ勝利に到達したシーズンがないのが不思議に感じる。30歳左腕の全盛期はこれからだ。

写真=BBM
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