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貢献度は岡本和真に負けていない? 阪神の四番・大山悠輔が「MVPの有力候補」に

 

岡本和を上回る得点圏打率


全試合で四番に座り打線をけん引している大山


 阪神が首位を快走している。2位・広島との直接対決となる8月15日の一戦(マツダ広島)で敗れ、1982年以来41年ぶりの11連勝はならなかったが、翌16日の同戦では5対3で逃げ切った。広島に8ゲーム差と再び突き放し、優勝へのマジックナンバー「29」が点灯。投打ががっちりかみ合った戦いぶりに、失速のイメージがわかない。

 今季は大卒3年目の村上頌樹ソフトバンクから現役ドラフトで移籍した大竹耕太郎が先発で大ブレーク。岡田彰布監督の用兵術も光る。肩に不安があった中野拓夢が遊撃から二塁に回り、攻守で躍動。遊撃のレギュラーをつかんだ木浪聖也は「陰のMVP」と評されるほどの活躍を見せている。リードオフマンの近本光司も俊足でチャンスメークすると共に、得点圏で勝負強さを発揮。八番の木浪が出塁し、一番の近本が本塁に還す攻撃パターンが確立されたことで、切れ目のない打線が実現できている。

 その中で、全試合四番でスタメン出場している大山悠輔の貢献度が非常に高い。今季は巨人の四番に座る岡本和真が打率.294、32本塁打、73打点をマーク。本塁打は2位の村上宗隆(ヤクルト)に9本差をつけて独走態勢に入って注目度が高い。一方で、大山は打率.278、13本塁打、59打点。3部門の数字では岡本和に見劣りするが、それだけで四番の価値は測れない。6犠飛、69四球はいずれもリーグトップ。得点圏打率.302は岡本和の.221を大きく上回る。「チャンスで大山に回せば何とかしてくれる」という期待が阪神ファンの間で高まる。

状況に応じたバッティング


 どんな形でも走者を本塁に還す。象徴的な打席が、8月12日のヤクルト戦(京セラドーム)だった。初回一死二、三塁の好機で追い込まれても粘り、フルカウントからサイスニードが投じた10球目のスライダーを遊ゴロ。その間に三塁走者の近本が先制のホームを踏んだ。相手が前進守備を敷いていなかった中、最低限の仕事を果たした。

 豪快なスイングも魅力だ。5日のDeNA戦(横浜)では初回一死一、三塁で、大貫晋一のスライダーを左翼席に運ぶ先制の13号3ラン。横浜スタジアムでは昨年6月28日からセ・リーグの本拠地球場での球団史上ワーストタイ記録となる13連敗を記録。4日の同戦で止めると、翌5日に主砲の一発で打線が活気づいた。この勢いで同一カード3連勝を飾り、続く巨人とヤクルトにも3タテ。大山はこの10連勝の期間でアーチは1本のみだが、広角に安打を打ち、粘り強く四球をもぎとってつなぎに徹することも。状況に応じた打撃で四番として申し分ない働きを見せている。

チャンスで力を抜くことをテーマに


 大山は今年6月に週刊ベースボールのインタビューで、「『力まない』ことを心掛けています。自分が決めてやろうと思い過ぎると、打席の中で変な力が入ってしまいます。そのために自分が思ったような野球ができないという経験をこれまで何度もしてきました。だからこそ『チャンスの場面で力を抜く』ということをテーマとしてやっています。(心と体の)どちらもですね。すべてにおいて、いかに自然体でプレーできるか、ということをテーマにしていますし、そのために『準備』をしっかりやっています。それは配球の準備、体の準備、心の準備、すべての準備です」と明かしている。

 さらに、「去年もいろいろとやっていましたが、それをより深く自分の中で考えることはしているので、今のところ、いい方向に行っているとは思います。そして、よりよい方向でさらに準備を進めていきたいです」、「あとはこうなったらこうしよう、といういくつかのパターンを持っていることで、動揺しなくなったということはあります。これまでは打席でカウントが進んでいく間に『どうしよう』という感情があったんです。でも、今年はその状況になったときに『次はこうしようかな』という感情に変化しているんです。そこがすごくいいな、と感じています」と手応えを語っていた。

 岡本和や村上に比べて派手さはないかもしれないが、首位をひた走る阪神を象徴する存在が大山だ。18年ぶりのリーグ優勝が現実のものになったとき、「MVPの有力候補」であることは間違いない。

写真=BBM
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