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2023夏の甲子園

【2023夏の甲子園】慶応が逆転勝利で4強進出 清原勝児は甲子園を完全に味方にする男

 

「悔いのないスイングをしてほしい」


6回表、慶応高は代打・清原が打席に立ち、球場のムードが変わった[写真=宮原和也]


「甲子園は清原のためにあるのか」

 1985年夏。PL学園高・清原和博が宇部商高との決勝で本塁打を放つと、ABC朝日放送・植草貞夫氏は実況で、この名言を発した。

 38年後の今夏。甲子園歴代1位の13本塁打を放った父・和博氏の次男・勝児(慶応高2年)が甲子園の土を踏んだ。北陸高との初戦(2回戦)で7回裏に代打で登場すると、割れんばかりの大声援が起こった(結果は左飛)。

 広陵高との3回戦は出場機会なし。背番号15の清原はサポート役に回り、献身的に動いた。迎えた沖縄尚学との準々決勝(8月19日)。6回表に、試合が動く。今大会の傾向である。

 慶応は5回を終えて0対2とリードを許していた。10分間のクーリングタイム。8分30秒が経過すると、三塁ベンチから清原がバットを持って出てきた。この回は先発投手の九番・鈴木佳門(2年)からの攻撃である。2回戦も先発投手の代打であり、森林貴彦監督の起用法から、出場は間違いないと見られた。

 球場全体のボルテージが徐々に上がっていく。そして、一瞬の静寂の中で「代打・清原君」のアナウンス。3万人の大観衆で埋まったマンモススタンドがどっと沸いた。2回戦に続き、甲子園を完全に味方にしたのである。

6点目のホームを踏んだ渡辺憩を出迎える清原。この回、2度目の打席への準備に入った[写真=牛島寿人]


 結果は投ゴロも、場内のムードは明らかに慶応高へ傾いていた。すると、続く一番・丸田湊斗(3年)の右二塁打を口火に、八木陽(3年)が左前打、渡邉千之亮(3年)が四球でつなぎ、四番・加藤右悟(2年)の左中間走者一掃二塁打で逆転に成功。猛攻は続き、一挙6得点。二死二塁から清原に2度目の打席が回り(三ゴロ)、打者10人の集中打だった。

 甲子園のスタンドは劣勢チームを後押しする風潮があるが、清原が独特な世界観をつくり、試合の流れを引き寄せたのは言うまでもない。

慶応は7対2で勝利。慶応普通部として出場した1920年以来、103年ぶりの4強進出だ。

甲子園のネット裏では父・清原和博氏が観戦した[写真=田中慎一郎]


 甲子園のネット裏で観戦した父・和博氏は大会本部を通じてコメントを出した。

「素晴らしいことですね。今日も大会屈指の投手に対し、6回の集中打は見事でした。ここまできたら慶応の力は本物でしょうし、一戦一戦、強くなっていると感じます。私がPL学園の時代だったら、こういうチームとの対戦は嫌ですね。勝児は厳しい球ばかりで結果は出ませんでしたが、次も勝児らしく、思い切り、悔いのないスイングをしてほしいです」

 1916年の第2回大会で全国制覇、20年の第6回大会では準優勝を遂げている古豪。勢いではない。全国屈指の激戦区と言われる神奈川を勝ち上がった実力を発揮している。
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