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酔いどれの鉄腕

野村克也さんは野球、稲尾和久さんは俺に人間を教えてくれた恩師/佐藤道郎『酔いどれの鉄腕』

 

 元南海-大洋の佐藤道郎氏の書籍『酔いどれの鉄腕』がベースボール・マガジン社から発売された。

 南海時代は大阪球場を沸かせたクローザーにして、引退後は多くの選手を育て上げた名投手コーチが、恩師・野村克也監督、稲尾和久監督との秘話、現役時代に仲が良かった江本孟紀門田博光、コーチ時代の落合博満村田兆治ら、仲間たちと過ごした山あり谷ありのプロ野球人生を語り尽くす一冊だ。

 これは不定期で、その内容の一部を掲載していく連載である。

度数はもちろん24度


『酔いどれの鉄腕』表紙


 本の内容をちょい出ししている連載。

 今回は2人の恩師について話だ。



 2人とも亡くなったけど、俺のプロ野球での恩師は、やっぱり野村克也さん、稲尾和久さんの2人だね。

 野村さんは野球の恩師。あれだけ野球が好きで、しかも熱を持っている人を俺は知らない。いつも野球のことばっかり話していたからね。

 でもさ、野村さんは2020年に亡くなられたけど、最後に交わした会話が、「お前は見合いを断りやがって」だからね。2018年のジャイアンツとホークスのOB戦のときさ。昔、監督とサッチーさんの紹介で見合いをしたことがあるんだけど断ったんだ。もう50年くらい前の話なのに、会うたびに言ってきた。まさか最後の会話もそれとはね。

 稲尾さんには人間を教えてもらった。優しくて、心が大きな人だった。何であんないい人が70歳で死んだんだろうね。早過ぎだよ。

 2007年に亡くなったとき、葬儀は親族と西鉄の親しいOBがほとんどだったけど、俺も呼んでもらい、棺も持たせてもらった。葬儀を仕切っていた池永(池永正明)さん(元西鉄)に「俺も持たせてもらえませんか」とお願いしたんだ。そしたら池永さんが「いいよ。稲尾さんは酔っぱらうとミチの話をよくしていたからな」って……。

 あらためて涙が出た。今でも稲尾さんの命日には店で偲ぶ会をする。11月13日だから足すと背番号と同じ24なんだよ、不思議なもんさ。そのときは焼酎の「鉄腕伝説稲尾和久」を飲みながらね。アルコール度数はもちろん24度だよ。
週刊ベースボール編集部

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