好機を演出する役割

【高校日本代表壮行試合】
大学日本代表8-0高校日本代表
(8月28日、東京ドーム)

　第31回WBSC U-18ベースボールワールドカップ(台湾、8月31日開幕)に出場する侍ジャパンU-18代表(高校日本代表)が8月28日、東京ドームで大学日本代表との壮行試合に臨んだ。2万5943人の観衆が見守る注目の一戦は、大学日本代表が8対0の完勝も、高校生も随所に好プレーを見せた。

　プレーボール直後の巧打だった。一番・一塁で先発出場した寺地隆成(明徳義塾高)が初回に左前打で出塁。後続が倒れ得点にこそ結びつかなかったが、馬淵史郎監督(明徳義塾高)の期待に応える、チームを勢いづける1本だった。

「相手は格上ですし、監督さんからも『アメリカ代表というぐらいの気持ちでやっていけ』と言われていたので。積極的に行こうと思って打席に入りました」(寺地)

　大学日本代表の先発は下村海翔(青学大)。7月の日米大学野球選手権では3試合に投げ、11回１失点の成績で最高殊勲選手賞(MVP)を獲得した今秋のドラフト1位候補右腕である。

　初球、151キロの直球を振り抜くと打球は三遊間を破った。「ストレートを張っていましたが、それでも振り遅れたような感じになって。大学生の球は違いました」と寺地は苦笑したが、ヒットコースへ弾き返したのはさすがのバットコントロールだった。

　明徳義塾高では三塁手として1年春からベンチ入りし、2年夏の甲子園では四番・三塁で2安打を記録(初戦敗退)。同年秋の新チーム始動から捕手へ転向した左の好打者だ。今大会は「ケガをしたときに少し経験したくらい」という一塁手での起用がメインとなるが、代表合宿でも軽快な動きを披露。「キャッチャーで評価されているのもあると思いますが、ほかのポジションでも守れるぞというところを見てもらいたい」と意気込んでいる。

　初優勝を目指す今大会、野手陣は守りと機動力を重視したメンバー選考となった。緻密な野球で着実に得点を積み重ねていく、そのためにも、寺地にはバットで好機を演出していくことが求められる。

「一番打者を任されたときは、先頭が出たらチームが活気づくので、そういうところでは一つのポイントなのかなと思います」

　馬淵監督は同戦後の会見で、「頭が痛いのは打順。もう1回考え直したほうがいいかな」と打順の再考について明かした。スペインとのオープニングラウンド初戦は9月1日。今大会の『打のキーマン』とも言える寺地はどの打順に組み込まれるのか。指揮官の采配に注目だ。

文＝小林篤