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首都大学リポート

今春5位に沈んだ東海大が名門復活へノロシ 主将・森球紀のサヨナラ打で筑波大から勝ち点奪取【首都大学リポート】

 

主将の一打で決着


 筑波大との3回戦でサヨナラ打を放った森球紀


【9月5日】一部リーグ戦
東海大6-5筑波大
(東海大2勝1敗)

 秋季首都大学リーグ第1週3日目。今春のリーグ戦では5位に沈んだ東海大。リーグ最多75度の優勝を誇る名門のプライドを取り戻すためにも今秋は勝負のシーズンとなる。

 しかし、第1週の筑波大戦は1回戦で勝利を挙げながら2回戦を落とし、1勝1敗のタイで3回戦へ。負けられない大事な一戦は、両チーム無得点のまま延長タイブレークに突入。10回、11回はともに2点ずつを取り合う死闘となった。

 迎えた12回、先攻の筑波大が1点を勝ち越す。しかしその裏、東海大は一死満塁のチャンスをつくると、主将の森球紀(4年・東海大静岡翔洋高)が「初球にストレートを空振りしていたので、もう一回投げてくると思い狙っていました」と2球目の真っすぐを弾き返した。これが左翼手の頭上を越える逆転の2点適時打となり、東海大が6対5のサヨナラ勝ちで筑波大を退けた。

 試合を決めた森は試合後、込み上げてくるものを抑えられなかった。というのも、この試合は2失策と、それまでいいところがなかったのだ。特に10回表は「焦る場面ではなかったのに慌ててしまった」と自らの悪送球で2点を失い、打撃でも同点の10回裏二死一、二塁のチャンスで遊撃フライに終わっていた。

「ミスをしたのにチームが追いついてくれた。チャンスではなんとか走者を返したかったのですが打てず……。それでも、もう一回チャンスで回してくれた」。1点を追う12回裏のチャンスで打席に立った森が感じていたのは、チームメートへの感謝の気持ちだった。

「下を向いていても結果はついてこないと思ったので、後悔しないように振っていこうと思いました。前の打席は力が入ってフライになってしまったので、無心になって集中していました」

 主将の思いを乗せた一打は、見事にチームへ白星をもたらした。試合後、井尻陽久監督も「みんながつくってくれたチャンスでキャプテンがよく打った」と勝ち点1を奪い取った一打を称えた。

チームの意識を統一


 昨秋は一塁手として初めてベストナインを受賞。その後、東海大の主将に就任したが、チームは低迷。「ずっと苦しい状況でした。上手くいかないことばかりで、眠れない日もありました」と振り返る。春季リーグの最終戦では、負ければ史上初めて2部との入れ替え戦に回る窮地まで追い込まれた。だが、その武蔵大との3回戦で森は5安打と大活躍。同点の9回裏には一死から安打で出塁してサヨナラのホームを踏み、「良い意味で開き直れました」と笑顔を見せていた。

 名誉挽回を期し、今夏は話し合いの場を多く設けたという。「春は試合に出た選手の数が多かったですし、1年生も加わったばかりだったのでチームの意識を統一できていませんでした。そこで、ミーティングを重ねたのですが、その中で『守り勝つ』という方向性を定めることができました」と森。守備は基本からやり直した。

 また、「チームメートには『私生活が野球につながる』と話しているので、普段の生活でもまずは自分からその姿勢を示して引っ張っていければと思っています」とグラウンドの外でもリーダーシップを発揮する。

 高校時代も主将を務めていたというが、当時は一人で考え込むことが多かったという。しかし、今は「金城(金城飛龍、4年・東海大相模高)や東海林(東海林航介、4年・星稜高)の助けを借りながらやっています」と頼もしい仲間にも恵まれている。

「夏のオープン戦では集中力の高い、締まったゲームができていました」と手応えを感じた中でのシーズンインだった。それだけに、第1週できっちりと勝ち点を挙げられたことは、選手たちにとって自信回復につながったことだろう。

 森は「目標はもちろんリーグ優勝で、連覇中の日体大に勝つために全国レベルを意識して練習してきました。ただ、一戦一戦が大事なので、粘って、粘って勝ち切っていきたいです」と話し、個人としては「もう一度、ベストナインを獲りたい。ただ、これも一試合、一試合の積み重ねなので、まずはチームの勝利、その結果として受賞できたらと思います」と語った。

 苦難のシーズンを乗り越えた森主将の下で、東海大が名門復活へのノロシを上げた。

文=大平明 写真=BBM
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