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首位独走の阪神 育成出身の強打者に「大山に匹敵する逸材」の期待が

 

印象的な一打で勝利に貢献


今季、打撃で急成長を見せている小野寺


 首位をひた走る阪神。9月5日の中日戦(バンテリン)で8対2と快勝し、4連勝をマークした。貯金29は2008年8月3日以来15年ぶり。優勝マジックを「14」に減らした。

 今年の強さの秘訣は選手層が厚いことだろう。佐藤輝明シェルドン・ノイジーら打線の中軸を担う選手も状態が悪ければスタメンは保証されていない。ハイレベルな競争が繰り広げられる中、レギュラーを虎視眈々と狙う若武者がプロ4年目の小野寺暖だ。

 今季は印象的な一打が目立つ。「三番・右翼」でスタメン出場した8月19日のDeNA戦(横浜)では1点差を追いかける6回一死二塁の好機で、右翼フェンス直撃の同点適時三塁打。右手でガッツポーズし、雄叫びを上げた。この一打で打線が活気づき逆転勝利を飾った。「三番・左翼」でスタメンに出場した9月2日のヤクルト戦(神宮)でも、1点差に迫った3回二死一、二塁の好機で右翼線に落とす逆転の2点適時三塁打。執念の一打が決勝点になった。

 開幕はファームスタートとなり、5月2日に一軍昇格後も2度のファーム降格を味わったが、7月5日以降は一軍に定着している。30試合出場で打率.333、9打点をマーク。得点圏打率.421と勝負強さが光る。代打でも打率.375のハイアベレージで切り札的な存在になっている。

 ドラフト6位で1年目からレギュラーをつかんだ中野拓夢を除き、1位で入団した近本光司大山悠輔、佐藤輝、森下翔太、3位入団の木浪聖也と上位指名の選手たちがスタメンに並ぶ。その中で大商大から育成ドラフト1位で入団した小野寺は異彩を放つ。プロ2年目の21年4月に支配下昇格。34試合出場で打率.179、1本塁打と一軍定着には至らなかったが、ウエスタン・リーグで首位打者(打率.315)、最高出塁率(.391)のタイトル獲得と格の違いを見せた。昨年は4月21日のDeNA戦(横浜)で4回に代打で出場し、左翼席に叩き込むプロ入り初の満塁アーチ。強烈なインパクトを残したが、32試合出場で打率.136、1本塁打と打撃で結果を残せなかった。

抱いていた危機感


 小野寺は危機感を抱いていた。昨年7月の週刊ベースボールのインタビューで、「二軍だといい結果を残せているのですが、一軍だと結果を残さないといけないという……自分で自分を苦しめている部分があります。自分にもっと自信を持って、相手を見下ろすくらいの気持ちを持って打席に立てるようにしたいです。やはり練習の数をこなさないと自信は持てないと思うので、その部分を増やしていきたいです」と口にしていた。

 さらに「自分から自分を追い込むことに重点を置いて練習をしています。やはり外野手なので打てないと使ってもらえませんし、打てなかったらすぐ二軍に落ちてしまうので、今年3年目ですが危機感をすごく持ってやっています。もうあとがないくらいの気持ちです」と胸の内も明かしていた。

三塁でもスタメン出場


 チームを盛り上げるムードメーカーで知られるが、内に秘めた闘争心は熱い。小野寺の強みはヒットゾーンが広いことだ。変化球への対応力が上がり、逆方向にも安打を飛ばすことで高打率をキープしている。結果を残すことで首脳陣の期待値も上がっている。本職は外野手だが、8月16、17日の広島戦(マツダ広島)では打撃不振の佐藤輝に代わって三塁のスタメンに抜てきされた。

 スポーツ紙記者は、「直球に強く、ミート能力だけでなく長打力を兼ね備えている。大山に匹敵する逸材だと思います。守備も強肩で足も速い。スケールの大きい選手で、試合に出続けてほしい選手の1人です」と期待を込める。

 リーグ優勝が見えてきたチームの心強い戦力となっているが、本人に満足感はないだろう。インタビューの「【FUTURE】描くレギュラーまでの道」というテーマで、自身が目指す未来予想図を吐露している。

「まずは、宮崎敏郎選手(DeNA)のように打率をすごく残して、バンバン二塁打を打つようになってレギュラーをつかみます。ポジションはやはりセンターしかないと思っています。近本(光司)さんが今は守っていますが、僕がそこに入って、近本さんをレフトに追いやりたいです。それくらいの覚悟でレギュラー獲りを狙っていきます」

 サクセスストーリーを叶えるために、打ち続ける。

写真=BBM
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