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ビールかけに姿なしも…佐藤輝明、森下翔太と共に「クリーンアップを張れる逸材」は

 

6月は月間打率.358


抜群のバッティングセンスを持つ高卒2年目の前川


 阪神が18年ぶりのリーグ優勝を決めた9月14日の巨人戦(甲子園)。試合後に行われた祝勝会で選手、首脳陣、スタッフがビールかけで喜びを爆発させた中、覇権奪回に貢献した前川右京の姿はなかった。

 智弁学園高で高校通算37本塁打をマークしたスラッガーは、ドラフト4位で阪神に入団。その打撃センスは他球団の選手たちからも一目置かれるほどだった。高卒2年目の今季は5月30日にプロ初昇格を果たし、同日の西武戦(ベルーナ)で「六番・指名打者」で即スタメンに抜擢された。主に右投手が先発のときにスタメン出場し、鋭いスイングで広角に安打を量産。打席内容にも大きな価値がある。DeNAのサイ・ヤング勝右腕・バウアーから6月25日の対戦で5回に右前適時打を放つと、7月12日の再戦でも8回一死から、チェンジアップを右中間にはじき返す二塁打でマウンドから引きずり下ろした。

 バウアーとの対戦成績は5打数2安打で打率.400。高橋宏斗(中日)に6打数3安打で打率.500、戸郷翔征(巨人)に4打数2安打で打率.500、森下暢仁(広島)に5打数2安打で打率.400と各球団のエース級の投手に強い。三番で起用されるなど6月は月間打率.358をマーク。チームは8勝14敗1分けと苦しんだが、前川の奮闘が大きな収穫だった。

やられっぱなしで終わらない


 打ち続ける新星に、相手バッテリーのマークは厳しくなる。7月に入ると快音が止まった。28日の広島戦(甲子園)では、3打席連続三振に倒れて途中交代した際は、悔しい感情が抑えられなかった。ベンチで涙を流しながら戦況を見つめる姿が大きな反響を呼んだ。

 やられっぱなしで終わるわけにはいかない。気持ちを早く切り替えることも一流の打者になるために、必要な要素だ。翌29日の同戦では4回に森下のカットボールを左前に運ぶ14打席ぶりの安打。6、8回の打席は四球を選び、3出塁ときっちり結果を残した。

 勝負の夏場でも活躍が期待されたが、8月2日に「特例2023」で登録抹消になって以降は、実戦復帰したファームでも打撃が本来の状態に程遠いため、鳴尾浜での残留練習でバットを振り込んだ。優勝の歓喜の瞬間は味わえなかったが、まだ20歳。焦る必要はまったくないだろう。

 阪神を取材するスポーツ紙記者は、「岡田彰布監督の期待が大きい選手で、将来的には佐藤輝明森下翔太と共にクリーンアップを張れる逸材です。ストイックな性格で野球に真摯に向き合っている選手なので、今年の活躍に満足はしていないはず。CS、日本シリーズがありますし、一軍の舞台に戻ってくる可能性は十分にあります」と期待を込める。

高校の先輩は4年目に大ブレーク


 高卒の野手が短期間で一本立ちするケースは少ない。前川が尊敬する高校の先輩・岡本和真(巨人)は新人の2015年9月5日のDeNA戦(横浜)でプロ初安打初アーチと華々しいスタートを切ったが、翌16年は3試合、17年は15試合出場にとどまった。だが、高卒4年目の18年に全143試合出場で打率.309、33本塁打、100打点と大ブレークした。

 高校時代の恩師・小坂将商監督は週刊ベースボールの取材で、「打球の飛距離、ボールをとらえる力は岡本和真と変わりません。ただ、前川はインパクトの際に両肩が固まってしまい、右肩にロックがかかって硬さが出てしまう。そこが柔らかくなればヘッドが走るようになる」、「長打力がどうしても注目されますが、前川はアベレージヒッター。これからはバットが木製になりますし、次のステージでは投手のレベルも上がりますが、今後、どう成長してくれるのか楽しみです」と語っていた。

 大きな可能性を秘めた左の強打者がどう進化していくか、楽しみだ。

写真=BBM
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