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中日の希望の光 根尾昂が今季初登板で快投に、他球団から「意外な評価」が

 

投球スタイルが変化


9月18日の中日戦で今季一軍初登板、初先発を果たした根尾


 この右腕はスポットライトがよく似合う。

 最下位に低迷する中日で、明るい材料をもたらしたのが中日・根尾昂だ。9月18日の広島戦(バンテリン)で今季初登板初先発し、7回途中4安打4失点(自責0)の力投。救援陣が崩れてプロ初白星はお預けとなったが、存在を強烈にアピールした。

 他球団のスコアラーは、根尾の変化に驚きを口にする。

「まったく違う投球スタイルに変化していましたね。昨年は150キロを超える直球にスライダーを交えて力でねじ伏せていたが、今回の登板では直球が140キロ台で球のキレと制球を重視していように感じました。変化球もフォークの精度が上がったことで投球の幅が広がっている。イメージは村上頌樹(阪神)でしょうか。制球力、変化球の投げ分けなどまだまだ磨かなければいけない点は多いですが、投手としての質が上がったように感じます」

 大阪桐蔭高では投打の二刀流で活躍し、世代を代表する選手として注目を集めたが、野手でプロ入り後はなかなか結果を残せず、昨季交流戦終了後の6月中旬に立浪和義監督と話し合い、投手登録に変更した。3年以上マウンドから遠ざかっていたにもかかわらず、きっちり投げ込む姿に非凡なセンスを感じさせる。主に救援で25試合に登板し0勝0敗1ホールド、防御率3.41をマーク。先発で調整していた今年は春先に投球フォームのバランスを崩した時期があったが、7月以降は調子を上げてウエスタン・リーグで4試合連続クオリティースタート(6回以上投げて自責3以下)と安定した投球を見せていた。

多くのファンが詰め掛けて


 根尾の人気は群を抜いている。今季一軍初登板に本拠地・バンテリンドームは3万6324人の大観衆が詰めかけた。初回に先頭打者・秋山翔吾に四球で出塁を許したが後続を断ち切り、3回まで無安打無失点の快投。4回一死から同期入団の小園海斗に初安打を許したが、堂林翔太を遊ゴロに仕留め、女房役の石橋康太が小園の二盗を阻止。5、6回も先頭打者に安打を許したが崩れない。いずれも併殺打でしのぎ、スタンドから大歓声が注がれた。快投が打撃にも好影響をもたらした。4回二死一塁で、左腕・森翔平の143キロ直球を右前に運ぶ今季初安打。7回に味方の失策も絡みマウンドを降り、後続が逆転され白星はつかめなかったが、サヨナラ勝ちを飾ったこの試合で一番の収穫は間違いなく根尾だった。

 投球内容を見ると、150キロ以上を計測した球は1球もない。だが、球速以上のキレを感じる140キロ後半の直球をストライクゾーンに投げ込み、相手打者を差し込んでいた。スライダー、フォークを効果的に使い、凡打の山を築く。2奪三振にとどまったことが、根尾の投球スタイルの変化を象徴していた。

「勝てる投手」の資質を備える右腕がお手本


 他球団のスコアラーが根尾の投球像と重ねた阪神・村上は「勝てる投手」の資質を備えている。直球は140キロ台だが初速と終速の差が少ないため、打者の手元でホップするような軌道で捉えられない。変化球の精度も高くフォーク、ツーシーム、カットボールを操り、テンポ良くアウトを重ねる。139回1/3を投げて16四死球というデータが、抜群の制球力を証明している。昨季まで未勝利だったが、大卒3年目の今季21試合登板で10勝5敗、防御率1.68と大ブレークし、最優秀防御率のタイトルを狙える位置につけている。

 根尾は19日に登録抹消されたが、一軍で次回登板のチャンスが巡ってくるだろう。クライマックスシリーズ進出の可能性は完全消滅したが、5位・ヤクルトに1.5差と逆転可能だ。2年連続最下位は球団史上初の不名誉な記録となるだけに、意地を見せたい。根尾は希望の光として次回登板も好投を見せられるか。

写真=BBM
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