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首都大学リポート

日体大が単独トップの桜美林大に5対1で先勝 中妻翔が9回に勝利を決定付ける2点適時打【首都大学リポート】

 

大引コーチの言葉で奮起


2安打2打点の活躍を見せた日体大・中妻翔


【9月23日】一部リーグ戦
日体大5−1桜美林大
(1勝)

 秋季首都大学リーグ第4週1日目。リーグ連覇中の日体大は前週で筑波大に不覚をとり、勝ち点は1のまま。今週は勝ち点2で単独トップに立つ桜美林大(1回戦)との一戦に臨んだ。

 この試合でダメ押しの2点適時打を放ち、チームに勝利を呼び込んだのが中妻翔(4年・常総学院高)だ。

 中妻は2年秋に打率.417をマークして首位打者、ベストナイン(外野手)のタイトルを獲得しているが、本人はあまり手応えを感じられなかったようで、「そこまで調子が良かったわけではないですし、バッティングの内容もまあまあ。たまたま獲れたという感じでした」と振り返る。

 しかし、である。2年時に個人タイトルを獲り順風満帆に見えた日体大での野球生活だったが、それからの1年間は苦しんだ。

「3年の春はなかなか調子が上がらず試合に出られませんでしたし、秋は左肩を故障してボールを投げることもできませんでした。進路や就職を考えるうえで大事な時期に結果を残すことができなくてかなりしんどかったです」

 そんな時に言葉を掛けてくれたのがヤクルトなどで活躍した大引啓次コーチだ。「大引コーチに『他のチームメートに比べて1年間を無駄にしてしまったんだから、もう一回、一からがむしゃらに泥臭くやるしかない』と言っていただいて、その言葉が胸に刺さりました。首位打者を獲ったことはもう忘れて『今まで以上に本気で取り組んでいかなければ』と思いました」

 それ以降、打撃練習では素振りに力を入れた。「ティーバッティングのようにボールを使った練習だと、どうしてもボールに合わせようとしてしまうのでスイングが弱くなってしまう。でも、素振りだと自分の決めたポイントを100%の力で振ることができるんです」

 中妻は1スイング、1スイングに集中し、ヘトヘトになるまで振り続けた。「このおかげでスイングが強くなり、試合中の打席でも実践することで、打球が速くなりました」。

 今春のリーグ戦では本塁打を2本放つなど後半に調子を上げ、2年秋以来2度目となるベストナイン(外野手)のタイトルを獲得。「ここまで苦しかったですが、頑張ってきて良かったです」と清々しい表情で振り返った。

 この秋のリーグ戦も序盤は調子がなかなか上がってこなかったが、ここでも大引コーチの言葉が復調への道を開いてくれた。

「試合の前日、大引コーチのところへ話を聞きに行ったとき『“気持ち”という言葉は好きではないけれど、もっと積極的に行け』と言っていただいたんです。これまでは打てないと思い込み、自分で気持ちを下げていたところがあったのですが、やるしかないと開き直ることができました」。

『自分がヒーローになる』


 こうして迎えた桜美林大との1回戦。「この試合は『自分がヒーローになるぞ』という気持ちでした」と言う中妻は、4回表の第2打席で先制点の足掛かりとなる二塁打を放った。

 打撃の内容は決して良くはなかったというが「バットを振り切ったことでいいところに飛んでくれました」と思い切ってプレーしたことが安打につながったという。

 そして一死一、二塁の場面では三盗に成功。「(盗塁は)変えちゃいけない自分の強み。足でチームに貢献していきたいです」とチャンスを広げ、黒川怜遠(2年・星稜高)の適時打で先制のホームを踏んだ。

 さらに、3対1で迎えた9回表一死満塁の場面では「初球から決めてやると思っていました」と1球目からスイング。この打球はファウルとなったが「積極的な気持ちが良い結果につながりました」と追い込まれながらもカットボールをセンターへ弾き返し、2者が生還した。

 粘る桜美林大を突き放すこの一打で、チームは5対1で勝利。古城隆利監督も「バッティングの調子は上向き。中軸は当たっているので、中妻が出塁してくれればもっとチームに勢いが付くはず。走塁も大きな武器で、この試合でも良いところで走ってくれました」と今後に向けて、さらに期待をかけている。

 リーグ戦はまだ中盤だが、今秋は混戦模様。中妻は「今シーズンは最終戦まで優勝がもつれると思うので、春と同じようにこれから調子を上げてピークに持っていきたい」と話す。

 さらに、「春は日本一を目標にしていましたが、大学選手権で明大にコールド負け(0対7)。力の差を見せつけられたので簡単に『日本一』とは言えませんが、食らいついていきたい。この秋もリーグ戦と関東大会を勝ち切って、もう一度全国の舞台で勝負したい」と続けた。

 個人タイトルもリーグ優勝も経験している中妻。まずはリーグ3連覇。そして、その後は唯一残った「日本一」の称号を奪いにいく。
文&写真=大平明
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