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今季4勝のみも…「2年後にFAで争奪戦必至」の中日右腕は

 

防御率2.44も大きく負け越し


今季は好投を続けるもここまで4勝と白星が伸びない柳


 中日ファンの胸を揺さぶる快投だった。

 本拠地・バンテリンドームで行われた9月24日の阪神戦。先発の柳裕也が8回まで3安打無失点の快投を見せたが、味方打線の援護がなかったため白星をつかめず。試合も延長12回で0対0のスコアレスドローに終わった。好投を続けるが報われない登板が目立つ。象徴的な試合が、「幻のノーヒットノーラン」と形容された8月13日の広島戦(バンテリン)だった。

 初回に味方の失策、死球で招いた一死一、二塁のピンチを無失点で切り抜けると、2回以降は危なげない投球で無安打投球が続く。だが、味方打線が得点を奪えずに0対0で試合は延長戦に突入。柳は9回までノーヒットノーランの快投も、延長10回のマウンドには上がらず記録達成は叶わなかった。

 今季バンテリンドームで11試合に登板して0勝6敗、防御率2.64。ナインたちは柳に白星をつけようと必死だが、得点が入らず重苦しい展開になるケースが多い。ビジターの試合でも援護が少ない。今季は4勝11敗、防御率2.44と大きく負け越しているが、白星と黒星が逆の数字でも不思議ではない。柳もチームメートの思いを感じ取っているのだろう。ノーヒットノーランが幻に消えた試合はサヨナラ勝利を飾り、試合後のお立ち台に呼ばれると、「皆さんの大声援のおかげでノーヒットノーラン達成できました! ありがとうございました!」とコメントして球場を盛り上げた。

タイトル獲得も心から喜べず


 直球のキレ、変化球の質、抜群の制球力、フィールディング、スタミナ、精神的な強さ……すべての水準で高い能力を兼ね備えている投手であることは間違いない。2021年に11勝6敗、防御率2.20で最優秀防御率、最多奪三振(168)のタイトルを獲得。26試合の先発登板で172イニング、2完封もいずれもリーグトップの数字だったが、チームは5位に終わり、心から喜べなかった。

 21年のシーズン終了後、柳は週刊ベースボールのインタビューで、「やっぱり勝ちたいです。その一言に尽きます。負ければ悔しいし、みんな勝つために戦っているので。優勝もそうですけど、まずは目の前の試合に勝ちたい。優勝というのは、その積み重ね。勝ちたいという気持ちの繰り返しだと思うんです。勝ちたい気持ちが弱くなれば優勝は遠のいていくと思います。誰が監督になろうと勝ちたいという気持ちは変わりませんが、優勝したいという気持ちは年々強くなっています」と思いを口に。

 さらに「数字に関してはこれからじっくりと考えたいと思っていますが、自分の野球をレベルアップさせること。今年は結果が出ましたけど、そうは言ってもまだ1年。今年のような成績を残し続けていくことが大事だと思っています。偉大な先輩方はみんなそうですから。良い年と悪い年の差がないですし、続けて好成績を残してこそ一流選手。僕なんてまだ1年やっただけですから、もう来年のことで頭がいっぱいです。2冠はうれしいですけど、喜んでばかりもいられないというのが正直なところです」と表情を引き締めていた。

「内容的には2ケタ勝利を同じ価値」


 他球団の編成担当は、柳についてこう分析する。

「変化球が多彩できっちり操れる。三振奪取能力が高いし、完投能力も高い。理にかなった投球フォームで投げているから肩、肘で大きな故障がない。今年は4勝しかしていないが、打線との兼ね合いもあるからね。内容的には2ケタ勝利と同じぐらいの価値がある。FAは2年後? 間違いなく争奪戦になるでしょう」

 順調にいけば、25年のシーズン中に国内FA権を取得する。もちろん、今の柳は中日で勝つことしか考えていないだろう。チームは13年以降の10年間でAクラスが1度のみと低迷が続き、今年も下位に沈んでいる。再建は道半ばだが、柳が最多勝争いをする状況にならなければ上位浮上は望めない。

写真=BBM
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