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社会人野球リポート

【社会人野球】“大人の野球”で「アジア王座」を狙う社会人代表 期待される新たな発信

 

新スタイルを模索


侍ジャパン社会人代表は9月25日から3日間、埼玉県内のグラウンドで国内直前合宿を実施。27日には記者会見で金メダルへの意気込みを語った。左からトヨタ自動車・嘉陽宗一郎投手、侍ジャパン社会人代表・石井章夫監督、トヨタ自動車・北村祥治主将、Honda鈴鹿・森田駿哉投手[写真=矢野寿明]


 2017年2月から社会人日本代表を指揮する石井章夫監督は就任以来「スモール・ベースボール」と決別し、国際舞台で対抗するための新スタイルを模索してきた。選考合宿では「見える化」を実施。外国人投手の速球、ムービングボールを外野へ運ぶ上での打球速度、打球角度、スイングスピードを測定。数値を判断材料に、対応できる選手を選考してきた。

 昨年のU-23W杯(台湾)では3大会ぶり2度目の優勝を遂げ、一つの成果を残した。日本古来の「堅実な野球」ではなく、選手たちはミスを恐れることなく「チャレンジ」を続ける。ミスが出れば、全員でカバー。石井監督は野手一人ひとりに明確な課題を与え、選手はベストパフォーマンスを発揮するための努力を重ねた。投手も野手と同じだ。あくまでも、自らのスタイルを貫く。得意な球種を前面に、全力で腕を振るのである。

 サポート体制も充実している。従来の技術スタッフ、アスレチックトレーナーのほか、メディカル系のドクター、フィジカル系のトレーナー、心理系のメンタルコーチ、数値を下にコンディションを見極めるクオリティコントロール。各分野の専門家が、選手のベストパフォーマンス発揮のために寄与していた。

 石井監督の一つの集大成が10月1日に野球競技が開幕する第19回アジア競技大会だ。日本は1994年の広島大会(第12回)以来の金メダルを目標としている。前回の18年(ジャカルタ)は韓国との決勝で惜敗(0対3)して銀メダル。5年前の無念を経験しているメンバーが6人いる。そのうちの一人、主将・北村祥治内野手(亜大)は意気込みを語る。

「2022年に予定されていたアジア大会が23年に延期になって、この大会を待ち望んでいたので、いよいよ始まるな、と。韓国、台湾を倒さない限り、金メダルはないと思います。石井監督が掲げる、打撃陣は強いボールをはじき返していくのが一番の課題。そこに対してずっと、チャレンジをしてきたので、韓国、台湾の好投手と対戦できるのが楽しみです。どんどんチャレンジして、結果的に金メダルを持ち帰れたら最高です。社会人野球のレベルアップのために、少しでも自分たちが先頭に立っていける大会にしていきたい」

 ベテラン、中堅、若手のメンバー24人を一つに束ねる29歳の主将・北村は「侍ジャパン社会人代表」としてのプライド、使命を語る。

「監督の指示待ちにならない。ベンチの指示を待たない。大人の野球。自分たちの判断でゲームを作っていく。ゲームを動かしていくスタイルで、社会人チームはやっていきたい。『結果を残すことで、日本の野球に対して違ったエキスを注入できるのではないか』と石井監督も言われているので、自分たちも付いていけるように、結果を残して、良い影響を与えられるようにしていきたいと思います」

 チームは9月25日から3日間の国内直前合宿を終え28日、中国へ向けて出発する。科学的根拠に基づいて動くのが、社会人代表のポリシー。石井監督は金メダルのポイントとして「個々の状況判断、チャレンジする気持ち」と語った。「国際試合は短期間ですけど、いろいろなアクシデントが起きますから、そういった状況を乗り越えることも大事です」。自信を持って選考した選手24人に対して「個々の意識も高いので、信頼している」と話した。侍ジャパンにおける各カテゴリーでも参考になる部分が多く、新たな発信が期待される。

※トヨタ自動車・嘉陽宗一郎投手(28歳)
(優勝した2023年の都市対抗で橋戸賞)
「社会人入社以来、球威アップ、球速アップを取り組んできましたが、昨年あたりから、真っすぐに自信がついてきている。その真っすぐで押していく。石井監督からも『真っすぐで勝負して、打者に向かっていく投球をしろ!』と言われている。抑えにいこうとするのではなく、自分の持ち味を出して、ベストパフォーマンスを発揮できれば、抑えられる相手。自分の武器でどこまで通用するのか楽しみ。自分の投球スタイルを貫いていきたい」

※Honda鈴鹿・森田駿哉投手(26歳)
(2023年の都市対抗でトヨタ自動車の補強選手として優勝に貢献した左腕)
「社会人入社以来、トーナメントで戦う中で1球の大切さを痛感することが多く、この1、2年でトレーニング一つ、キャッチボール一つに対するこだわりを持ちながら取り組み、結果として出ている。慣れない環境、食生活においても難しいことがあると思いますが、いつも通りのベストパフォーマンスができるように、万全の準備をしていきたいです」
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