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【大学野球】大卒でプロ入りを目指す東大2年・酒井捷 95年春以来の東大首位打者の可能性も

 

打撃好調の2つの秘訣


東大の一番・酒井は慶大1回戦の第1打席で中前打を放った。右は慶大で通算19本塁打の主将・廣瀬隆太。甲子園で活躍した選手と切磋琢磨するために、東大野球部に入部した


 過去に東大出身のプロ野球選手は6人いるが、すべて投手として入団している。2020年春から母校を指揮する井手峻監督(今春から病気療養中のため、大久保裕助監督が監督代行)は中日入団後、外野手としてもプレーしたが、野手専任でのプロ入りは一人もいない。

 東大不動の「一番・右翼」である酒井捷(2年・仙台二高)は大学卒業後の「プロ志望」を表明している。172センチ76キロ、右投げ左打ちの外野手だ。

 東大文科二類に現役合格。赤門への志望理由は「高校時代、甲子園に出場している選手たちと対戦したい」と明確だ。1年秋のリーグ戦でデビューすると、慶大とのフレッシュトーナメント(2年生以下でチーム編成)では5打数4安打1打点。チームの7回コールド勝利(16対6)に貢献し「あそこがきっかけになっている」と神宮でプレーする上で自信を得た試合だ。2年春からはレギュラーに定着し、チームトップの打率.270。早大1回戦では相手の右腕エース・加藤孝太郎(4年・下妻一高)から初本塁打を放つなど、あらためて打撃センスの良さを印象づけた。

 定位置を獲得して2シーズン目の今秋、開幕から5試合連続安打。3カード目の慶大1回戦(9月30日)では、右前、中前へと2安打を記録した。好調の秘訣は二つある。

 まずは、体を開かないこと。逆方向への意識が好結果につながっているという。大久保助監督は「コンパクトで、動きにムダがない。バットのヘッドが下がらない。お手本。他の選手も見習ってほしい」と、手放しで褒める。

 次に意識しているのは、タイミングだ。阪神近本光司を参考に「足を上げたときのバランス感覚が優れている。ステップまでの動作がうまい」と、動画を何度も見て分析。また、同リーグの明大・宗山塁(3年・広陵高)、飯森太慈(3年・佼成学園高)と左打者2人も研究する。春のリーグ戦よりも右足の上げ方を控えめにし、体全体のブレが小さくなったため、よりコンタクト力が高まっている。

「打率よりも出塁率」


阪神・近本を参考に、バットを一握り短く持ち、コンパクトなスイングを見せる


 5試合を終えて18打数7安打、打率.389。東大の首位打者は1995年春の間宮敦(横浜翠嵐高)が最後。28年ぶりのタイトル奪取への期待が高まるが「打率よりも出塁率。一番打者としての役割を果たしていきたい」と、あくまでも、チームの勝利のためにまい進する。

「プロを目指している」と語る2年後のドラフトについては、冷静に自身を見つめる。

「右投げ左打ちの外野手でプロとなると、圧倒的な打撃、圧倒的な足を見せていかないと……そこが、課題になる」

 50メートル走6秒0。遠投100メートル。バットを一握り短く持ち、ボールに逆らわないシャープなスイングを見せる酒井。赤門のリードオフマンのバットから目が離せない。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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