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野手転向も頭をよぎったが…防御率1.07と奮闘した中日の「上原浩治2世」は

 

将来の抑え最有力候補


今季は自己最多の56試合に登板した藤嶋


 6位に低迷した今季の中日だったが、明るい話題は若手の台頭だ。岡林勇希は不動のレギュラーに定着し、DeNAから現役ドラフトで移籍した細川成也は打率.253、24本塁打、78打点と自己最高の成績をマーク。投手は育成から支配下昇格した新人右腕の松山晋也が36試合登板で1勝1敗17ホールド、防御率1.27とセットアッパーで輝きを放った。

 そして、この右腕も大きな手応えをつかんだシーズンになっただろう。安定感を買われてシーズン終盤に抑えを任された藤嶋健人だ。

 先発が序盤に崩れたとき、試合終盤の勝負所など幅広い起用法に応えてきた。リードした場面で登板した際に安定感を欠く傾向があったため、今年も春先はビハインドの展開の登板が多かったが、7月1日のDeNA戦(横浜)から28試合連続無失点と安定したパフォーマンスを続け、防御率は1点台前半に。絶対的守護神のライデル・マルティネスが9月16日の巨人戦(バンテリン)で緊急降板して臀部の張りで登録抹消されると、抑えの代役に抜擢されて4セーブをマークした。

 自己最多の56試合登板で、1勝1敗4セーブ14ホールド、防御率1.07。スポーツ紙記者は「直球とスプリットの精度が上がり、抑えの条件である三振を取れることが大きな強みです。あとはあの強心臓ですね。ピンチの場面でも堂々として内角を突ける。ライデルの後を継ぐ抑えの最有力候補でしょう」と評価する。

能力を高く評価していた指揮官


 地元の東邦高から入団してプロ7年目。2019年に右手の血行障害で2度の手術を受けた際は野手に転向することも頭をよぎったが、見事に復活。7月に一軍昇格すると21試合連続無失点を記録して14ホールドをマーク。立浪和義監督は野球評論家だった20年に週刊ベースボールのコラムで、藤嶋の能力を高く評価していた。

「彼の最大の特徴であり、武器はフォームだと思います。元巨人の上原浩治選手のフォームを参考にしているようですが、テークバックが小さく、球の出どころが見えづらいフォームは確かによく似ていますね。さらに降ろした左足を着くまでが遅く、ここで独特の間(ま)をつくりながら、高い位置からボールを指で斬るようにリリースします。昨年は彼の真っすぐに差し込まれるバッターが多かったのですが、私もネット裏から見ていて、これはタイミングが取りづらいピッチャーだなと思いました。真っすぐは150キロ出ているわけではありませんが、この間の一拍で打者の体が前に引き出されてしまい、スピードガン以上の速さを感じるタイプです」

低迷からの脱却へ活躍が不可欠


「変化球はスプリットに自信を持っているようですが、リリースポイントが高く、真っすぐと同じようなフォームから投げ、同じような軌道から落ちていますので、打者は幻惑されると思います。ただ、まだ全体に制球がアバウトで少し球が高くなる傾向があります。これまでは、それでも変則的なフォームで打者がタイミングを狂わされていたので大丈夫でしたが、それだけだとプロの世界ではどうしても慣れられてしまいます。今のままでは、昨年のような結果は出せないかもしれません。もっと球速を上げる、と言っても簡単なことではないと思うので、まずはもう少し制球力を磨き、低め、低めに投げていきたいところです。それが安定してできるようになれば、抑え候補一番手でしょう」

 昨年7月1日の阪神戦(バンテリン)では、当日先発予定だった大野雄大が背中の張りで登板を回避したため、4年ぶりに先発登板して3回無失点。チームの緊急事態で勝利に貢献したが、今季は「便利屋」ではなく勝利の方程式を担うセットアッパー、抑えで自身の力を証明した。低迷期からの脱出へ……来季も藤嶋の活躍は不可欠だ。

写真=BBM
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