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よみがえる1958年-69年のプロ野球

巨人・王貞治は、最初から王シフト誕生を予感していた?/『よみがえる1958年-69年のプロ野球』1962年編

 

『よみがえる1958年─69年のプロ野球』第5弾、1962年編が9月28日に発売。その中の記事を時々掲載します。

『よみがえる1958年-69年のプロ野球』1962年編表紙


あこがれはテッド・ウイリアムズ


 今回は62年編に誕生した巨人王貞治の一本足打法の話だ。



 7月1日に誕生した王の新打法については、しばらく新聞に表記はない。初めては、おそらく19日の中日戦ダブルヘッダー2試合(後楽園)で15、16号を連発しリーグトップとなった翌日だ。報知新聞に「最近の王は、右足をあげて独特のフォームで打つ」と書いてあった。

 ただ、野球評論家からは「あんな打法で打てるわけがない。たまたまだ」という声が多く、相手ファンからは「犬が小便する真似はよせ」「足を上げなきゃ打てんのか」とヤジられた。

 徐々に三番・長嶋茂雄、四番・王が確立。長嶋のバットはなかなか火がつかなかったが、王は着実に本塁打、打点を重ねていった。

 9月9日の阪神戦(後楽園)では3打席連続弾で33号。「3本目のホームランはまったく意識していませんでした。打ったのは内角低めのカーブで、いつもなら打とうかどうか迷うのですが、あのときはスムーズにバットが出ました」と笑顔を見せた。

「シーズン当初は20本を目標にしました。それを意外に早くクリアしたので、次は青田昇さんの球団記録33本(50年)と思っていましたが、それも並んだ。今は40本をマークしたいと思っています」

 王のあこがれは、同じ左打ちでレッドソックスの4割打者、テッド・ウイリアムズだった。

「ウィリアムズの打撃で最大の魅力は、いかなるときでも思い切って右翼に引っ張る力強さです。彼の強打を警戒してブードロー・シフト(野手がライト方向に寄る)を敷いて対抗したときも動ぜず、恐れず、かえって彼らの守備陣を撃破する強打で打ちまくった姿こそ僕の理想像です」

 のち『王シフト』が登場したときの対処が思い浮かび、興味深い。

 最終的には38本塁打、85打点でホームラン王、打点王の2冠。打率はリーグ9位の.272だった。

 ただし、当時の王は「足を上げるのはタイミングを合わすためのもの。いずれは足を下し、普通のフォームでも打てるようになればと思っています」と一本足を過渡期のフォームと思っていた。
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